2019 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経の低酸素領域に存在する白血病細胞を標的とした新規治療法の開発
Project/Area Number |
17K16251
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 格 京都大学, 医学研究科, 助教 (10610454)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中枢神経白血病 / CART療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究は中枢神経浸潤白血病を標的とした特異的治療ターゲットに対する新規治療法の開発を目的とする。前年度構築した経時的にマウスをsacrificeする事無く中枢神経浸潤を可視化する事が可能なLuc-cell lineシステムを用いて、今年度はCART細胞療法を用いた中枢神経浸潤白血病に対する新規治療戦略の提示を目指した。 具体的には中枢神経浸潤マウスモデルを用いて、CART細胞療法の、中枢神経浸潤白血病細胞に対する効果・安全性の検討を行なった。これまでの研究結果からは中枢神経白血病細胞は骨髄白血病細胞とは存在する微小環境に大きな差があり、中枢神経白血病細胞は酸素や糖分、蛋白などが相対的に低下した微小環状に存在する事を示しており、その様な中枢神経の微小環境でもCART細胞が白血病細胞に対して殺細胞性効果を発揮できるか検討した。以下の検討では前年度の検討において構築したLuc導入SUSRを使用して検討した。 免疫不全マウスにLuc導入SUSRを脳室内移植後、7日目にCART細胞を静脈内移植して治療効果を観察すると、5匹中2匹では腫瘍細胞の消失を確認したが、3匹のマウスで腫瘍残存、もしくは腫瘍再発を認めた。静脈内投与では効果は認めるものの治療効果は不十分であったため、CART細胞を脳室内投与したところ6匹中、6匹で腫瘍消失を認めCART細胞の経静脈的投与と比較して優位に治療効果が優れていることが示された。CART治療の中枢神経合併症が危惧されたが、CART脳室内投与群においても一過性の体重減少など以外には大きな合併症は認めなかった。血清中、髄液中サイトカインも測定したがいずれもサイトカイン放出症候群を疑わせるような挙動は示していなかった。 これらの結果からCART細胞を用いた中枢神経浸潤白血病に対する新規治療戦略を提示することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年の予定通り、免疫不全マウスモデルとcell lineを用いて中枢神経浸潤を再現性良く観察可能なcell lineを使用し、IVISシステムを用いて現在臨床で非常に大きな治療効果を示しているCART細胞を用いた白血病中枢神経浸潤に対する新たな治療戦略を提示することが出来た。第122回日本小児科学会(口演@金沢)、第11回日本血液疾患免疫療法学会(口演@東京)で発表し、現在、論文化し投稿、revise中である。 また、これまでの中枢神経白血病に対する新規治療開発研究報告として、2019年度松医会賞(信州大学医学部)を受賞し、29th Symposium of the international association for comparative Research on leukemia and related disease(Soul, Korea)にて招待講演、第61回日本小児血液がん学会学術集会(広島)にてシンポジウム招待講演、京都薬科大学生命薬化学系病態生理学分野セミナー招待講演、第7回浜松毒性フォーラム招待講演を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで構築したPDXシステムを用いて、中枢神経白血病細胞は酸素や糖分、蛋白などが相対的に低下した微小環状に存在する事で性質を変え、その変化した性質を標的とした新たな治療戦略を示した。さらにはその様な中枢神経の微小環境でもCART細胞が白血病細胞に対して殺細胞性効果を発揮できる事を示し、CART細胞の髄腔内投与にてさらに効果的に治療をする事が出来ることを示した。 CART細胞をはじめとしたがん免疫療法が各種のがんで奏効しており化学療法、放射線療法、手術療法につぐ第4の治療法として期待されている。一方で、奏功者、非奏功者が存在し、特異な自己免疫的副作用などが報告されている。この様な免疫作動薬使用時に周りの免疫環境がどの様に変化するかは未だ詳細は不明である。この様な免疫環境では白血病自身の性質に加えて、様々な因子が複雑に交差して治療反応性・副作用出現に係わっていることが推察されるため、様々な角度からの包括的オミックス解析が病態把握、さらにはバイオマーカー探索には必須である。 今後は、今回実績として報告した難治性白血病に対してCART療法をはじめとする免疫療法を主軸に、多角的オミックス解析を用いて病態解析、バイオマーカー探索による治療成績向上、さらには新規治療開発を目指す。
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