2018 Fiscal Year Research-status Report
小児肝がん細胞において分子標的となりうる膜蛋白ADAM32の制御機構の解明
Project/Area Number |
17K16265
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
深澤 賢宏 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 研究員 (80734285)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ADAM32 / 肝芽腫 / 強発現 / ノックダウン / CDDP |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、患者検体の解析から、小児肝芽腫において特異的に発現亢進している分子としてADAM32を見出しました。そこで肝芽腫におけるADAM32の機能と発現制御機構を明らかにし、分子標的治療法・診断法開発へ応用展開することを目的として本研究を開始しました。今年度は引き続き、肝腫瘍に特異的に高発現することが分かったADAM32に関して機能的意義を検討しました。昨年度に作成した、ADAM32の発現を誘導できる肝芽腫細胞株HepG2、および、ADAM32の発現を抑えることができるshRNAベクターを用いて分子細胞生物学的検討を進めました。これまでの解析により、肝芽腫細胞株のコロニー形成能、細胞遊走・浸潤能、細胞増殖が、ADAM32の発現レベルに従って変動することが分かりました。これらの解析に加えて、肝芽腫の治療で標準的に使用されるシスプラチン(CDDP)を用いて、ADAM32の発現変動による細胞死への影響を検討した所、ADAM32ノックダウン群で、有意に死細胞が増加した事から、ADAM32は細胞死の制御に関与していることが示唆されました。また、ノックダウン実験においてRNAseqによる解析を行った結果、MAPキナーゼやインターフェロンの制御に関与していることが示唆されました。さらに、発現制御機構に関して、昨年度に作成したプロモーターレポーターを用いて解析した結果、転写開始点近傍にADAM32のプロモーター活性制御に重要な領域があることが分かりました。次年度では、これらメカニズムの詳細な検討を進め、論文の作成に取り掛かります。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強発現とノックダウンの実験系を確立することができた事から、ADAM32の機能の概要が明らかになってきました。これらの実験から、ADAM32は肝芽腫細胞の分化制御を介して増殖及び浸潤・転移において重要な機能を果たしており、また、抗がん剤感受性に影響があることから、治療標的となる可能性が示唆されました。一方、ADAM32の発現制御機構に関しての解析から、ADAM32発現量を調節する重要な遺伝子配列が同定され、ADAM32を量的に調節する方法開発への応用展開が期待された。以上の様に、当初の計画通りに研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
強発現実験とノックダウン実験により見出された機能の詳細を明らかにするため、引き続き細胞生物学的解析、生化学的解析を行い、次年度中に論文作成を進めていきます。
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Causes of Carryover |
実験に使用する予定であった試薬の生産が薬品会社の都合により一時休止となったのに伴い、これに係る一部の実験を延期したため次年度使用額が生じました。平成31年度の予算と合わせて当該実験に使用する予定です。
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