2017 Fiscal Year Research-status Report
エンテロウイルスD68による小児急性弛緩性麻痺の病態解明と治療法の確立
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17K16266
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松重 武志 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (60528941)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エンテロウイルスD68 / 急性弛緩性脊髄炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年に全国で小児急性弛緩性麻痺患者が報告され、同時期に流行のあったエンテロウイルスD68が原因と推測されている。流行の発生時期や地域、同一患者での感染症前駆症状から麻痺の出現と気道からのウイルス検出の時間的一致などが大きな根拠となっていた。一方で、症状のある中枢神経系でウイルスがほとんど検出されないことや傷害組織の病理学的データが少ないこと、細胞レベル及び個体レベルでの科学的根拠に乏しいことが問題点だった。その後、最近1-2年でエンテロウイルスD68の侵入に必要な神経細胞の受容体が発見され、急性弛緩性脊髄炎モデルマウス作成の成功が報告された。しかし、これらはヒトにおける感染経路を十分説明できるかどうか明らかでない。また、同一ウイルスでなぜ呼吸器症状のみの患者と急性弛緩性麻痺を来す患者に分かれるのかなど臨床的疑問は解決できておらず、治療法や予防法は未だ確立していない。 本研究では、研究協力施設に依頼し、山口県で2015年に発生したエンテロウイルスD68感染症患者からウイルスの分離に成功した。実験室内では気道上皮細胞、神経細胞、グリア細胞等で、エンテロウイルスD68感染に必要となる受容体が認められるか、感染が成立するかを確認中である。また、急性弛緩性脊髄炎モデルマウス作成の準備を進めている。臨床研究として、神経移植術を行った急性弛緩性麻痺患者のデータ収集や組織学的検討について準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
受容体の発現について確認するための工程が遅れている。培養細胞もしくは抗体に問題がある可能性がある。 急性弛緩性脊髄炎患者の新規手術件数が予想より少なく、保存検体が少ない。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の細胞で受容体発現と感染成立を確認する。 複数の条件下で免疫反応や感染しやすさを確認する。 急性弛緩性脊髄炎モデルマウスを作成し、複数の条件下で症状発現のしやすさや重症度を調べる。 急性弛緩性脊髄炎の患者検体を用いて、病理学的特徴を明らかにする。
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