2018 Fiscal Year Annual Research Report
Pathophysiology and treatment in enterovirus D68-associated acute flaccid myelitis
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17K16266
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松重 武志 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (60528941)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エンテロウイルスD68 / 急性弛緩性脊髄炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性弛緩性脊髄炎 (AFM) はポリオ様の弛緩性麻痺を呈する稀な神経疾患である。MRIでは脊髄前角に長大な病変を認める。エンテロウイルスD68 (EV-D68) 流行期にAFMの発生が重なること、AFM患者の気道からEV-D68が検出されたことから、AFMの原因の一つとしてEV-D68が挙げられている。乳飲みマウスへのEV-D68感染により麻痺を来すことも根拠の一つとなっている。しかし、ヒトではAFM患者の脳脊髄液からEV-D68が検出されることは例外的であることから、EV-D68が直接脊髄前角に感染するのか、免疫学的反応等を介した二次的な機序による神経障害なのか不明であった。 本研究の成果は、主に以下の2点である。 1)AFM患者において、脳脊髄液中の炎症性サイトカインを解析し、急性期にインターフェロンγ (IFN-γ)とインターロイキン6 (IL-6) が著明に上昇していることを発見し、報告した (Pediatr Neurol)。過去の報告と同様、EV-D68は咽頭から検出されたが脳脊髄液では検出されていない。IFN-γはウイルス感染時における宿主防御に重要な役割を果たしており、中枢神経系への直接的なウイルス侵襲時に上昇する。AFMはEV-D68が直接神経へ感染することで生じることが示唆された。このことは急性期において、免疫反応を抑制する治療を行うかどうかに関わる重要な所見である。 2)遠隔期に神経移行術を行ったAFM患者について、手術時に得られた末梢神経の病理学的解析、ウイルス検出を試みた。神経束内での神経の萎縮性変化、軸索の脱落、脱髄所見が示唆された。蛍光免疫染色では、病側神経のごく一部の軸索にEV-D68陽性所見を認めた。PCRでもEV-D68検出を試みている。 現時点で急性期治療法や予防法は確立されておらず、並行してマウスモデルを用いた解析の準備を進めている。
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