2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of oral mucosal vaccine for infant.
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17K16267
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
木本 貴士 徳島大学, 先端酵素学研究所(デザイン), 特任研究員 (90724261)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肺サーファクタント / インフルエンザ / 粘膜ワクチン / 経口投与ワクチン / 乳幼児 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来のインフルエンザワクチン (HA) は、皮下・筋肉内投与で行われている。近年、粘膜の抗HA抗体を誘導できる経鼻や経口といった粘膜投与型ワクチン開発が全世界で活発に行われている。本研究では、乳幼児期における、ヒト肺サーファクタント由来人工合成粘膜アジュバントSF-10を用いた経口HA投与の有効性評価と免疫学的特性解析を行った。生後2週齢のマウスに、皮下、経鼻、経口で免疫し、最終免疫2週間後および1年後の抗HA抗体、抗HA抗体産生細胞、そしてHA応答性T細胞のサイトカインについて解析した。SF-10混合HA経口投与は、最終免疫2週間後に他の投与方法と比較して高い血清および気道粘膜抗HA抗体価を示し、血清中IgG抗体価は1/2、粘膜抗体価は1/4になるものの、最終免疫1年後においても抗体の持続が確認された。また抗体産生細胞解析の結果、SF-10混合HA経口投与は、最終免疫2週間後のみならず1年後でも、脾臓と肺から抗体産生細胞が検出された。この時、長期生存抗体産生細胞が移行する骨髄においても抗体産生細胞を検出したところ、最終免疫2週間後と比較して1年後に骨髄の抗体産生細胞が約3倍多く検出された。これら結果はSF-10混合HA経口投与が、長期にわたって感染防御抗体を産生・分泌し、ワクチン効果が長期間持続することを示唆している。さらにHA応答性T細胞をTh1、Th2、Th17サイトカインを指標に解析した結果、最終免疫2週間後と1年後共に、Th1 (IL-2、IFN-γ)、Th2 (IL-4、IL-5)、Th17 (IL-17A、IL-22) サイトカイン産生T細胞がSF-10混合HA経口投与マウスの脾臓から検出された。このことから、SF-10混合HA経口投与は抗原特異的な記憶T細胞の形成を促進し、病原体感染時の速やかな免疫誘導が可能であると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫系が未熟とされる乳幼児期においてSF-10混合HAを経口免疫されたマウスにおいて、投与1年後でもB細胞とT細胞共に免疫記憶が持続しており、また抗原特異的なTh1、Th2、Th17細胞を誘導できることを確認した。大人マウスと比較した乳幼児マウスの消化管粘膜免疫の優位性に関しては、まだ明確な結果が出ていない。しかし、現在消化管粘膜における免疫担当細胞の解析技術の確立がほぼ完了しており、順次両者マウスの比較検討を行う計画である。以上の理由から、概ね順調と判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、特に消化管粘膜の免疫に集中し、以下の2項目についてまとめる。 1) SF-10混合抗原経口投与によるマウス乳幼児マウスと大人マウスの消化管粘膜免疫の誘導効率に相違があるのかを調べ、ある場合には抗原提示細胞をはじめとした免疫担当細胞の局在や抗原取り込み部位に差があるのかを検討する。 2) インフルエンザワクチン抗原以外に、オボアルブミンのようなモデル抗原や他の病原体抗原をSF-10と混合経口投与し、消化管における免疫誘導効果を確認することで消化管感染症ワクチンとして応用可能であるかを検討する。
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Causes of Carryover |
平成29年度内に物品の発注、納品が完了し、すべての経費を使い切ったが、支払いが平成30年度の4月となったため。
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