2017 Fiscal Year Research-status Report
BCP-ALL新規融合遺伝子OFD1-JAK2の機能解析と治療開発
Project/Area Number |
17K16277
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
坂本 謙一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20782048)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 急性リンパ性白血病 / Ph-lile ALL / OFD1-JAK2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1)新規融合遺伝子OFD1-JAK2の白血病発症機序をin vitroおよびin vivoで明らかにする事、および2)OFD1-JAK2陽性細胞に対するJAK2阻害剤単剤および既存化学療法薬との併用の有効性をin vitroおよびin vivoで明らかにする事である。 JAK2を含むALL関連融合遺伝子はこれまで複数報告されているが、ALLの発症にどのように関わるかは十分には検討されておらず、今回新たに同定されたOFD1-JAK2融合蛋白がどのようにALLの発症に関わるかを明らかする意義は高いと考えられる。また、JAK2関連融合遺伝子陽性ALLは小児期から若年成人まで見られ、いずれも、予後不良であり、有効な新規治療法の開発が急務である(NEJM 2014;371:1005-1015)。JAK2阻害剤の有効性が期待されるが、その効果については、一定した見解を見ない。そこで、JAK2阻害剤を代表とする分子標的薬の効果について樹立した細胞株を用いて、検討を行い、その有効性に関する基礎的なデータを得る予定である。 近年の網羅的遺伝子解析研究の進歩により、小児ALLの治療標的となりうる遺伝子異常が多く同定されている。 京都府立医科大学小児科は、国内外の研究グループと共同し、本邦の小児ALLの遺伝子解析研究において中心的な役割を担い、ALLの新規キナーゼ関連融合遺伝子としてOFD1-JAK2を同定した。チロシンキナーゼの再構成を伴うALLでは、チロシンキナーゼ阻害薬が有効な例があることは知られているが、こうした分子標的薬の感受性は個々の融合遺伝子毎に様々であり、機能解析実験による検証が不可欠である。JAK2関連の融合遺伝子の報告は多いが、機能解析研究は不十分であり、本研究で白血病発症機序を解明し、分子標的薬の感受性を明らかにする意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予備実験では、OFD1-JAK2を発現するマウスのB前駆細胞性白血病細胞株(Ba/F3)の作成に成功し、RT-PCRでOFD1-JAK2の発現を確認した。しかしながら、OFD1-JAK2を発現したBa/F3細胞は、Emptyベクター導入Ba/F3細胞よりも生存時間は長いものの、IL3非依存性に十分な増殖を得ることができなかった。このため、OFD1-JAK2コンストラクトの配列を再度見直し、コンストラクトの不備が見つかったため、コンストラクトの再作成を進めている段階である。当初の予定では、OFD1-JAK2発現BaF3細胞を用いた、In vitroでの機能解析をすすめる予定であったが、上記コンストラクトの不備のため予定よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
OFD1-JAK2コンストラクトの再作成が終われば、速やかにBa/F3細胞へ導入し、IL3非依存性の増殖が得られるかを検証する。IL3非依存性の増殖が確認できれば、1)OFD1-JAK2導入Ba/F3細胞におけるJAK/STAT経路活性化の有無の検討、2)JAK2におけるキナーゼドメインとOFD1におけるLisHモチーフの重要性の検討、3)OFD1-JAK2導入Ba/F3細胞に対するJAK2阻害剤の治療効果をIn vitroで検証する。引き続き、OFD1-JAK2白血病モデルマウスを作成することにより、in vivoでのJAK2阻害剤の有効性の検討を行う。
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Causes of Carryover |
次年度以降、OFD1-JAK2コンストラクト再作成およびOFD1-JAK2導入Ba/F3細胞の機能解析のため、下記の物品購入、学会参加および論文作成に助成金を使用する予定である。 消耗品:(試薬類)遺伝子導入試薬、PCR 関連試薬、タンパク解析用試薬、アポトーシス解析用試薬の購入が必要である。また、細胞維持のためIL-3などのサイトカインと細胞培養試薬が必要である。(実験器具類)細胞培養を行うためのディッシュやプレート、検体吸引用のチップ、検体保存用のエッペンドルフチューブなど、分子生物学的解析を行う際に用いる器具の購入が必要である。 国内および国外旅費:研究成果発表のため、日本血液学会総会、小児血液・がん学会総会など血液学、小児科学の学会に参加予定であり、その旅費および滞在費の一部に用いる。また、学会の参加登録費が必要となる。米国血液学会(ASH)などでの国際学会に参加予定であり、その旅費および滞在費の一部に用いる。また、学会の参加登録費が必要となる。 論文作成費:研究成果を論文として投稿していくため、英文校正費、投稿掲載費が必要となる。
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