2017 Fiscal Year Research-status Report
小児脳腫瘍に対する新規樹状細胞治療における抗原提示機序の分子免疫学的解析
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17K16280
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
山岡 正慶 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (70614874)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小児脳腫瘍 / 樹状細胞 / 免疫治療 / 抗原提示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、難治性小児脳腫瘍に対する新規樹状細胞治療を行った症例における本治療の詳細な奏効機序や免疫学的な耐性獲得機序を明らかにし、より効果的な小児がん免疫療法を確立することを目的とする。今回は主に既存の腫瘍検体を用いた免疫組織学的解析を中心に行った。対象症例は正中部発症の神経膠腫(Midline glioma)1例、髄芽腫9例、上衣腫11例にて腫瘍内の免疫担当細胞(T細胞やマクロファージ)や免疫調整因子(HLAクラス1・2)、または腫瘍関連ペプチド等の発現・分布を確認した。その結果、免疫担当細胞や免疫調整因子の染色パターンと予後との相関に明らかな傾向は見いだせなかったが、上衣腫に関しては腫瘍関連ペプチドの発現が他の癌腫と異なっていることがわかった。また、先行研究として行われている成人症例の検体を用いた解析にて、本免疫治療前後で細胞障害性T細胞やマクロファージの増加が確認できた。小児例における治療用融合細胞や患者由来リンパ球を用いた研究は臨床研究の進捗状況からまだ検体の取得が困難で開始できなかったが、培養細胞を用いた解析の基礎実験の準備として、神経膠腫と頭蓋内胚細胞腫瘍の新規例の腫瘍検体を用いて数種の培養条件にて初代培養を試みた。上衣腫に関しては今回明らかになった腫瘍関連ペプチドを用いてT細胞の特異的テトラマー解析などで免疫反応性のモニタリングができる可能性が示唆された。今後、前方視的に本解析も進めていく。また、融合細胞によって抗原提示されると考えられる未知のペプチド(ネオアンチゲン)の探索も並行して進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本臨床研究は再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づき関東信越厚生局より平成30年2月に認可を得て症例集積を開始している。そのため平成29年度の症例としての検体確保は困難で、先行して開始している成人例および免疫治療を行っていない従来の小児脳腫瘍症例を対象とした基礎的な解析が中心となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は小児例の症例集積とともに、実際の対象症例の検体を用いて解析を進めていく。具体的には治療用融合細胞や腫瘍内リンパ球、マクロファージを対象に遺伝子発現解析を行い、並行してCTLの誘導状況のモニタリングとして、ELISpot解析、T-Select MHC Tetramer解析を進めていく。また、腫瘍標本を用いた免疫組織学的解析も引き続き行う。最終的に得られたデータを実際の臨床情報と照合・吟味し、融合細胞からどのような抗原が提示され、細胞障害性T細胞がどのように腫瘍細胞を認識・攻撃しているかを検証し、それまでに得られた新たな知見を論文化する。
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Causes of Carryover |
平成29年度の研究では外部委託による遺伝子発現解析を行わなかったため、当初の予定経費よりも支出は少なかった。この分は平成30年度に繰り越し、本来予定しているELISpotアッセイやTetramerアッセイ、腫瘍検体を用いた免疫組織学的解析と合わせて実施する予定である。
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