2018 Fiscal Year Research-status Report
先天性中枢神経障害に対する母親の脂肪組織由来幹細胞を用いた胎児細胞移植療法の検討
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17K16311
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
川嶋 章弘 昭和大学, 医学部, 助教 (10783376)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 胎児治療 / 脂肪由来間葉系幹細胞 / ダウン症 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎児の中枢神経系の発達は妊娠12~20週に細胞分裂が盛んになることから、妊娠8~12週に21トリソミーを診断し、中枢神経系の形成期に間葉系幹細胞を移植することで高次脳機能障害を軽減できる可能性がある。申請者は、母体由来の脂肪組織間葉系幹細胞に着目し、脳神経細胞の再生と機能改善を目的とした胎児治療法の開発に取り組んでいる。この研究の特色は、本法をヒトに応用した場合に最も問題となる移植細胞を生着率の低さを解決するため、免疫系に拒絶されにくい母体由来の脂肪組織由来幹細胞を妊娠中に採取精製して、胎児に投与することで生着率を高めることが可能な点にある。本研究において、マウスで脂肪組織由来間葉系幹細胞を胎仔脳室内投与により、移植細胞が胎仔の脳内に生着することを見出している。さらに、胎仔に投与した幹細胞が神経細胞に分化することを明らかにしている。さらに現法を用いることで、母体の脂肪組織間葉系幹細胞を使った場合に同種の脂肪組織間葉系幹細胞に比較して、移植早期に細胞傷害性T細胞の誘導が少なく、炎症性サイトカインの発現を低下させ抗炎症性サイトカインの発現を上昇させることで移植片の生着率が向上し、移植片の生着の妨げとなる母体の免疫反応を抑制し移植早期の生着率の向上に成功している。この成果はダウン症児の高次機能障害の改善を目的とする胎児治療に母体の間葉系幹細胞を用いることで道を開く画期的な方法であると考える。本研究成果は、出生前診断により早期治療介入が可能となった染色体疾患や遺伝性疾患をもつ胎児に対する胎児治療の可能性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では効率的な脂肪組織由来間葉系幹細胞の神経分化誘導を確認するために細胞凝集塊から三次元培養を用いて培養を行った。これにより、免疫組織化学的に成熟ニューロンへの分化を確認し、グルタミン酸負荷による細胞内へのカルシウムの取り込みを確認していた。動物実験では、マウス脂肪組織由来間葉系幹細胞を胎仔脳室内投与により、移植細胞が胎仔の脳内に生着し、さらに胎仔に投与した幹細胞の一部が神経細胞に分化することを明らかにした。しかし、投与した幹細胞の周囲にレシピエント由来の炎症性アストロサイトの集簇を認め、移植免疫の抑制が必要であると考えられた。したがって、母体の脂肪組織間葉系幹細胞を使い胎児に移植を行うことで移植片に対する免疫を抑制することが可能であることを確認した。同種の脂肪組織間葉系幹細胞に比較して、移植早期に細胞傷害性T細胞の誘導が少なく、炎症性サイトカインの発現を低下させ抗炎症性サイトカインの発現を上昇させることで移植片の生着率が向上し、移植片の生着の妨げとなる母体の免疫反応を抑制し移植早期の生着率の向上に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進としてダウン症モデルマウスに応用し、移植後の脳の組織学的および分子生物学的解析と行動解析を行い、母体の脂肪組織間葉系幹細胞を用いた胎児治療の有効性を証明していく。ダウン症モデルマウスにおいては妊娠前に脂肪組織由来間葉系幹細胞を採取した雌マウスに対して、ダウン症モデルである雄マウスを交配させる。ダウン症モデルの胎仔マウスを作製し、子宮内で胎仔への幹細胞の移植を行う。また移植細胞においても細胞凝集塊からニューロスフィア形成を行いより神経分化能を有する細胞を選択し投与を行うことで移植片の生着および効率的な神経分化を図る。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、本研究内容の発表を次年度の4月開催予定である日本産科婦人科学会で発表予定であるため学会参加費として使用するためである。
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