2018 Fiscal Year Research-status Report
皮膚組織幹細胞特異的エピジェネティクス制御機構を標的とした扁平上皮癌治療戦略
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17K16332
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
羽澤 勝治 金沢大学, 新学術創成研究機構, 助教 (40622460)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 核膜孔複合体 / 扁平上皮癌 / 遺伝子発現 / 上皮分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
核膜孔複合体(NPCs)は30種類のヌクレオポリン(NUP)から成り立つ複合体であり、核膜における様々な情報を制御する。NPCsの構造・動態変化による機能転換は、クラシカルな輸送能力に限定されず、転写活性制御にまで及ぶことがわかりつつあり、とりわけ、細胞の性質決定に関わる遺伝子群の転写を活性化することが指摘されている。 本研究課題では、ケラチノサイトの幹細胞特性に関わる核膜孔複合体分子ヌクレオポリン(NUP)の機能を明らかにするために、当初計画として以下の項目を計画した。 ①遺伝子導入法によりNUPの発現量が異なる細胞および遺伝子改変マウスを作成し、ケラチノサイトの幹細胞特性(自己複製能力、未分化維持)とNUPの発現量の関係について細胞レベル・組織レベルで解析する。 ②NUPの下流で機能する標的遺伝子を同定し、この標的遺伝子発現制御に関わるエピジェネティクス制御機構を解明する。 In-vitro実験より、未分化維持に機能的に重要なNUPを同定した。このNUPは未分化細胞の性質に重要である細胞増殖ならびに分化関連遺伝子の発現抑制を維持する機能をもつことを明らかとした。網羅的な遺伝子発現解析の結果より、このNUPによる未分化維持能力は、マスター転写因子の発現維持に起因することが示唆された。同時に、ヒストン修飾因子と協力し、上皮組織特異的LncRNAの発現抑制を介して、分化関連遺伝子の発現量を抑制していることを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018 年度は、上皮組織幹細胞の未分化維持に重要な役割を果たすNUPにより制御される遺伝子発現ネットワークの詳細の解明に取り組んだ。 網羅的な遺伝子発現解析の結果より、NUP依存的に変化する遺伝子群を同定した。その中で、上皮分化関連遺伝子の発現制御に関わるノンコーディングRNAを見出し、発現量ならびに機能アッセイを行った。また、この発現制御において、NUPと共同して機能するヒストン修飾因子を同定した。今後はこれらの詳細な分子メカニズムについて明らかにする予定である。 また、この上皮組織幹細胞の未分化維持に関わるNUPは、上皮組織幹細胞に由来する扁平上皮癌(Squamous Cell Carcinomas: SCCs)において発現量がさらに上昇し、SCCsの悪性化にも関わることを見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により同定したNUPは、転写制御を介して上皮組織幹細胞や扁平上皮癌(Squamous Cell Carcinomas: SCCs)における上皮分化関連遺伝子の発現を抑制する一方で、幹細胞機能に関わる重要なマスター転写因子の発現を誘導する機能を有することを見出した。 このように、NPCsによる転写活性が細胞機能に影響することは事実であるものの、核膜周縁はヘテロクロマチン(不活性化状態の凝集したクロマチン)が大部分であり、転写を抑制する環境として認識されている。よって、NPCsがマスター転写因子を含めた細胞の性質決定にかかわるゲノム領域をたぐりよせ、それらの発現を誘導・維持するメカニズムについては謎に包まれている。 NUPが作用するゲノム領域を決定するために、NUPを標的としたChromatin Immunoprecipitation Sequence(ChIP-Seq)解析を行う予定である。得られたゲノム領域については、従来のChIP-PCR法に加え、免疫蛍光染色法による核内ゲノム領域のイメージング解析による検証を行う予定である。また、NUPによる転写制御活性にかかわる機能的分子についても、より詳細な解析を行う。 これらの情報を、2018年度までの成果で得られた細胞学的データやトランスクリプトームデータとの統合解析を行い、NUPによる幹細胞特性制御メカニズムの全貌解明に努める。
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[Journal Article] Novel function of HATs and HDACs in homologous recombination through acetylation of human RAD52 at double-strand break sites.2018
Author(s)
Yasuda T, Kagawa W, Ogi T, Kato TA, Suzuki T, Dohmae N, Takizawa K, Nakazawa Y, Genet MD, Saotome M, Hama M, Konishi T, Nakajima NI, Hazawa M, Tomita M, Koike M, Noshiro K, Tomiyama K, Obara C, Gotoh T, Ui A, Fujimori A, Nakayama F, Hanaoka F, Sugasawa K, Okayasu R, Jeggo PA, Tajima K.
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Journal Title
PLoS Genet.
Volume: 14
Pages: e1007277
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Co-activation of super-enhancer-driven CCAT1 by TP63 and SOX2 promotes squamous cancer progression.2018
Author(s)
Jiang Y, Jiang YY, Xie JJ, Mayakonda A, Hazawa M, Chen L, Xiao JF, Li CQ, Huang ML, Ding LW, Sun QY, Xu L, Kanojia D, Jeitany M, Deng JW, Liao LD, Soukiasian HJ, Berman BP, Hao JJ, Xu LY, Li EM, Wang MR, Bi XG, Lin DC, Koeffler HP.
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Journal Title
Nat Commun.
Volume: 9
Pages: 3619
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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