2017 Fiscal Year Research-status Report
種痘様水疱症における紫外線曝露による皮疹形成機序の解明
Project/Area Number |
17K16341
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
平井 陽至 岡山大学, 大学病院, 助教 (10756068)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 種痘様水疱症 / EBウイルス / 非バイアス次世代TCRレパトア解析 / γδT細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
EBウイルス関連T/NK細胞増殖症の表現型として、主に小児に発症する光線過敏症に種痘様水疱症 hydroa vacciniforme;HV がある。HVでは末梢血、皮疹部共にEBウイルス感染γδT細胞が増加し病態に大きく関わることを報告したが、紫外線曝露による皮疹形成機序についてはいまだ不明であり、この機序解明が本研究の主たる目的である。 本年度は主に非バイアス次世代TCRレパトア解析によるEBV関連リンパ増殖性疾患への応用を主眼に置いた。従来の方法では検出し得なかったHV患者における微量のTCRクローンを、PCRバイアスがかからない非バイアス次世代TCRレパトア解析(Repertoire Genesis Inc. Japan)を用いて検出した。また、HVには古典型と全身型が存在し、それぞれの特徴として古典型HVは全身症状や血液学的検査異常を認めず、大多数の例は思春期までに自然治癒する予後良好な疾患であるが、全身型HVは潰瘍形成を伴うような重篤な皮膚症状や発熱・肝障害・リンパ節腫脹などの全身症状、末梢血EBVゲノム数が著明に増加するような慢性活動性EBウイルス感染症(chronic active Epstein-Barr virus infection ;CAEBV)に伴って発症することがある。①古典型HV(無症状期)②古典的HV(増悪期)③全身型HVの高齢発症患者を対象にして、非バイアス次世代TCRレパトア解析を行った。 その結果、従来の方法では検出し得なかったHV患者における微量な同一のTCRクローンを皮膚・末梢血共に認め、臨床的な表現型毎でEBウイルス感染細胞が異なる特徴を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①古典型HV(無症状期)②古典的HV(増悪期)③全身型HVの高齢発症患者を対象にして、非バイアス次世代TCRレパトア解析を行った。いずれも稀な症例であり、サンプル収集にやや時間を要した。 結果として、①,③の症例において従来の方法では検出し得なかったHV患者における微量のTCRクローンを皮膚・末梢血において検出し得た。②の症例についてはRNA濃度不足で解析できなかった ①古典的HVは従来γδT細胞にEBウイルスが感染し、その病態に大きく関わっていることを発表したが、本症例でも通常の多様性を欠いたγδT(γ8,9、δ2) の同一クローンを皮膚・末梢血共に認めた。またそれらγdδT細胞のCDR3領域には多様なアミノ酸置換を認めた。これらは激しい増殖を繰り返し、変異が蓄積する為による為、主たるクローンに類似した配列が検出されることがあり、EBウイルス感染を示唆する所見であった ③の症例ではαβT細胞においてメジャークローンを皮膚・末梢血に認め、逆にγδTは多様性を持っていた。EBウイルス感染における臨床的な表現型の違いや、これまで捉えることができなかったアミノ酸置換についても焦点を当てて解析を行えた。
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Strategy for Future Research Activity |
EBV感染γδT細胞の走化性をEZ-TAXIScanTM簡易型細胞動態解析装置(Effect Cell Institute社製)を用いて測定し、CXCR4のケモカインリガンドであるCXCL12/SDF1が遊走に大きく関わっていることが判明した。次にCXCL12発現細胞同定を予定している。 表皮角化細胞の培養細胞(NHEK)を用い、紫外線刺激(UVA)やIFN-γ等の刺激実験を行ったが CXCL12発現増強は認めず、EBウイルス感染γδT細胞からの自己分泌の傾向も見られなかった。 本年度は樹状細胞や血管内皮細胞においてもCXCL12発現作用があるか、同様な刺激実験を主眼に予定している。また、HV患者サンプルが採取可能であれば、引き続き非バイアス次世代TCRレパトア解析やHV患者由来EBV感染γδT細胞株の樹立を目指す。
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