2017 Fiscal Year Research-status Report
炎症性皮膚疾患の病態形成に関わる抗菌ペプチドmBD14の発現制御機構の解明
Project/Area Number |
17K16346
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
広瀬 晴奈 大分大学, 医学部, 医員 (50750915)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 抗菌ペプチド / defensin / TRAF6 / 黄色ブドウ球菌 / 炎症性皮膚疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、何らかの原因で抗菌ペプチド(defensin-3, hBD3)の発現が減少して皮膚細菌叢の恒常性が破綻すると、黄色ブドウ球菌が増加してアトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患が悪化すると考えられている。hBD3は、病原体センサーであるToll様受容体(TLR2)や炎症性サイトカイン(TNFα,IL-1)のシグナルによって誘導されると考えられているがその詳細は不明である。本研究は、TLR/IL-1Rシグナルを伝達するTRAF6に着目し、生体内の皮膚組織におけるhBD3の誘導機序を分子レベルで解明する。そこで、マウスのhBD3オーソログであるmBD14の発現誘導機構を明らかにするため、ケラチノサイトやランゲルハンス細胞に特異的TRAF6欠損マウスに黄色ブドウ球菌(S.aureus)を皮膚感染させ、mBD14の誘導、S.aureusの感染レベル及び皮膚炎症病態を解析する。 初年度では、ケラチノサイトやランゲルハンス細胞で特異的にTRAF6を欠損するマウスを作製するため、TRAF6 floxマウスをK5-CreマウスならびにCD11c-Creマウスと交配し産仔を得た。さらに、それぞれの組織特異的TRAF6欠損マウスおよびその対照マウスの背部を除毛し、皮膚にS.aureus懸濁液を塗布し24時間カバーした後、皮膚内のmBD14のmRNAの発現レベルをreal time PCR法で解析した。対照マウスでは、mBD14の発現レベルはS.aureus感染により上昇したが、興味深いことに、ケラチノサイト特異的TRAF6欠損(K5-CreTRAF6)マウスでは、その発現上昇が著しく障害されていた。一方、ランゲルハンス細胞特異的TRAF6欠損(CD11c-CreTRAF6)マウスでは、正常にmBD14のmRNAが上昇した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度では、ケラチノサイトやランゲルハンス細胞で特異的にTRAF6を欠損するマウスを作製するため、TRAF6 floxマウスをK5-CreマウスならびにCD11c-Creマウスと交配し予定通りの産仔数が得られた。また、S.aureus皮膚感染モデルを作製するため、条件検討を行い、菌液塗布後にmBD14の発現レベルを評価する系を確立できた。 実際に、ケラチノサイトならびにランゲルハンス細胞で特異的にTRAF6を欠損するマウスにS.aureusを感染させたところ、皮膚組織内のmBD14のmRNAの発現レベルがケラチノサイト特異的TRAF6欠損(K5-CreTRAF6)マウスで著しく障害されていることを見出した。一方、ランゲルハンス細胞特異的TRAF6欠損(CD11c-CreTRAF6)マウスでは正常にmBD14のmRNAが上昇したことから、各組織におけるTLR-TRAF6シグナルの役割に違いがあることが明らかになった。これらの発見は当初予想していなかったもので、本実験により初めて明らかになった事実である。次年度以降の研究では、ケラチノサイトに着目しその分子機構を明らかにする。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度では、S.aureus感染によるmBD14の発現上昇がケラチノサイト特異的TRAF6欠損(K5-CreTRAF6)マウスで著しく障害されていることを見出した。 次年度では、ケラチノサイト特異的TRAF6欠損(K5-CreTRAF6)マウスやランゲルハンス細胞特異的TRAF6欠損(CD11c-CreTRAF6)マウスにS.aureusを感染させ、背部皮膚組織を数日後に切除し、重量を計量した後、皮膚組織のホモジネートを血液寒天培地で培養する。コロニー数を計測することで組織1gあたりのS.aureusの菌数を算出することで各マウスにおける感染レベルを明らかにする。また、同時に感染部位のHE染色、S100タンパク染色、トルイジンブルー染色などの病理組織標本を作製し、単位面積あたりの表皮の厚さ、炎症細胞浸潤(リンパ球、好酸球、肥満細胞)を半定量的に解析する。さらに、同組織のIL-1β、TNF-α及びTARCの発現レベルをreal-time PCR法およびELISA法にてmRNAレベルおよびタンパクレベルで解析する。
|
Causes of Carryover |
初年度では、ケラチノサイトやランゲルハンス細胞で特異的にTRAF6を欠損するマウスを作製するため、TRAF6 floxマウスとK5-CreマウスならびにCD11c-Creマウスとの交配を進めたが、順調に産仔が得られて実験に使用できた結果、当初予定していたマウス飼育管理費を削減できた。また、mBD14の発現レベルを評価するためのS.aureus皮膚感染モデルの樹立も順調に進んだため、実験動物や試薬の費用が抑えられた。当該助成金は請求した助成金と合わせ、主に消耗品として次年度に使用する予定である。
|
Research Products
(7 results)
-
-
-
-
-
-
[Presentation] アンピシリンとバンコマイシン投与による腸内細菌叢とグルタミン酸、酪酸代謝経路の異常が腸炎を誘導する2017
Author(s)
園田 光, 玄同 淑子, 尾崎 貴士, 野口 香緒里, 広瀬 晴奈, 佐知 望美, 神山 長慶, 飛彈野 真也, 水上 一弘, 村上 和成, 小林 隆志
Organizer
癌・炎症と抗酸化研究会
-
[Presentation] 新規脂質メディエーターのOEA及びPEAは、Toll様受容体9(TLR9)刺激による樹状細胞とB細胞の活性化を抑制する2017
Author(s)
尾崎 貴士, 後藤 亮, 園田 光, 広瀬 晴奈, 玄同 淑子, 野口 香緒里, 神山 長慶, 飛彈野 真也, 石井 宏治, 柴田 洋孝, 小林 隆志
Organizer
癌・炎症と抗酸化研究会