2017 Fiscal Year Research-status Report
角層pHを利用したアトピー性皮膚炎の発症予測法および発症予防法の開発
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17K16347
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
酒井 貴史 大分大学, 医学部, 客員研究員 (20624290)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 角層pH |
Outline of Annual Research Achievements |
フィラグリン遺伝子とTmem79遺伝子に変異を有するFlaky tailマウス(FTM)は、角層pHの恒常性維持機能に障害があり、年齢とともに皮膚炎を自然発症することが知られている。また、同マウスの自然発症皮膚炎には、部位特異性がある。平成29年度、研究代表者はこの皮膚炎の部位特異性に着目し、角層pHを利用したアトピー性皮膚炎診療応用への足掛かりとして、基礎実験を行った。年老いたFTMは、頸部に皮膚炎を発症するが、背部皮膚は正常である。若いFTMでは、頸部、背部ともに、明らかな皮膚炎は生じない。そして、年老いたFTMの皮膚炎を発症した頸部皮膚は、角層pHが高い。この4か所の皮膚、即ち、若いFTMにおける頸部皮膚、背部皮膚、年老いたFTMにおける頸部皮膚、背部皮膚をサンプリングし、マイクロアレイにかけ、遺伝子発現解析を行った。過去の研究では、FTMの実験において、比較対照として野生型マウスが主として用いられている。今回は、皮膚炎部位特異性を利用した、同一マウス内の比較を行った。過去の野生型マウスを対照とした実験では、FTMの自然皮膚炎の発症に、IL-1、IL-17ファミリーや、TSLPなどが重要と報告されてきた。しかしながら、皮膚炎を発症した年老いたFTMの頸部で、特にこれらの遺伝子発現が他部位に比べて増加しているということはなかった。DAVIDを用いたGO解析、KEGG pathway解析では、プロテアーゼ活性、プロテアーゼインヒビター活性、皮膚の感染症等が、皮膚炎発症に寄与している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
角層pHは、アトピー性皮膚炎の病態と深く関わっていることはよく知られているが、その関連性、角層pH制御の機序など、十分わかっていない部分も多い。今回、マイクロアレイを用いて、部位特異性を利用した皮膚炎解析を行ったことによって、新たな発症因子の推察を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
角層pH恒常性機能障害のあるFTMにおいて、皮膚炎を発症する部分、そうでない部分の違いを明確にすることは、角層pHを利用したアトピー性皮膚炎診療の手がかりになると考えられる。マイクロアレイの結果を元に、今後、PCR等の手法を用いてさらに病態の解明を進めていく。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、参加を予定していた学会に急遽参加できなくなったこと、マイクロアレイの実験、解析が主となり、物品費が予想よりかからなかったこと等から、次年度使用額が生じた。平成30年度に、これまでの研究成果を学会で発表予定であり、その旅費の計上、ならびに、今後予定しているPCR用の消耗品に、助成金を使用していく予定である。
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