2017 Fiscal Year Research-status Report
Cutaneous homeostasis maintained by vitamins and minerals, and the skin diseases caused by these deficiencies
Project/Area Number |
17K16348
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山口 さやか 琉球大学, 医学部附属病院, 講師 (70571397)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 栄養障害性皮膚症 / ペラグラ / 亜鉛欠乏症 / ビオチン欠乏症 / ランゲルハンス細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビタミンや亜鉛、稀少金属は、哺乳類において補酵素として機能し、その欠乏により特定のタンパク合成、代謝経路や細胞機能が障害され、各々特有の臨床症状を生じる。 飲酒機会が多く未成年の飲酒にも抵抗の少ない沖縄県では、アルコール依存などの偏った栄養摂取により、ビタミンB3が欠乏するペラグラ(皮膚炎、下痢、認知症症状)を、若年女性といえども時に発症する。ペラグラ以外の栄養障害性皮膚症として、ビオチン欠乏症、亜鉛欠乏症、アミノ酸欠乏症などがあるが、成人に生じるこれら栄養素の欠乏は複合して生じることが多く、患者の臨床所見の観察のみでは、これらの病態などを栄養素毎に明確に区別することは難しい。ペラグラやビオチン欠乏、亜鉛欠乏、アミノ酸欠乏症では、強い一次刺激性皮膚炎が共通して生じるが、全く別個の栄養素の欠乏により、何故類似した皮膚症を呈するのか、今だ解明されていない。 我々はこれまでに、ペラグラやビオチン欠乏の患者皮膚でも、亜鉛欠乏症などと同様に、表皮ランゲルハンス細胞が特異的に減少、消失することを見いだした。本研究課題では、個別の栄養欠乏モデルマウスを作製し経時的に網羅的解析することで、個々の栄養素の欠乏が、ランゲルハンス細胞を含めた多様な樹状細胞の維持や分化に影響する機序を決定し、さらには、個々の樹状細胞の機能を探索することで、栄養障害による皮膚症の発症メカニズムの理解を目標とする。 現在、ビタミンB3、ビオチン、亜鉛の栄養素をそれぞれ除去した食餌を負荷したモデルマウスの作製を開始した。そのうち、ビタミンB3欠乏であるペラグラモデルマウスについて、経時的背部皮膚を採取した。これらをRNAマイクロアレイにて正常マウス皮膚のRNA発現と比較検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビタミンB3、ビオチン、亜鉛などの栄養素を除去した食餌を負荷したモデルマウスの作製のため、これらの栄養素を除いた齧歯類用の食餌をそれぞれ購入した。 ビタミンB3欠乏(ペラグラ)モデルマウスについて、特殊食餌の投与前、負荷後4週間、8週間、12週間と、経時的に背部皮膚をそれぞれのモデルマウスから採取し、病理標本、RNAと蛋白の抽出を順次行った。 多様な樹状細胞の病理学的な動向を、逐次、免疫組織学的に解析する手法は、限られた既存のヒト患者の病理検体においては、限定的に有効であり、唯一の手法であろうと考える。しかし、豊富に使用できるモデルマウスの皮膚検体においては、マイクロアレイ解析を行い、統計的・計量的に解析することで、前提や先入観なく新規の細胞の変化も同定が可能である。ビタミンB3欠乏(ペラグラ)モデルマウスについては、マイクロアレイを行い、正常コントロールマウスと比較解析をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に作製した個別の栄養欠乏状態のモデルマウス(ペラグラ、亜鉛欠乏、ビオチン欠乏モデルマウス)において、RNA発現の観点より選別した消失あるいは増減する皮膚の構成細胞や浸潤細胞、樹状細胞について、実際のモデルマウスの皮膚において免疫組織学的に確認する。各モデルマウスの皮疹部と非皮疹部のマイクロRNAアレーの比較解析により、栄養素依存性に発現が変化する、ランゲルハンス細胞を含めた樹状細胞の維持に必須の因子についても検証する。 ビオチン欠乏症の他に、ペラグラや亜鉛やアミノ酸欠乏症のモデルマウスの皮膚病変部組織を用いて同様の解析を比較することで、病理学的には非常に類似して観察される病態の細部の違いを明らかにすることが可能となる。 ヒト以外の動物種においては、栄養素の要求性や代謝が異なり、必ずしも除去食のみではヒトと同等の病態を呈しないことがありうる。その際は、これまでに確立したビオチンや亜鉛欠乏マウスでの解析を主体とすると共に、モデルとする動物種をラットや他の飼育動物に変更することで、課題の遂行を継続する。ラットなど通常の実験動物に関しては、マイクロアレイのセットは市販されており、同等に利用が可能である。
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