2017 Fiscal Year Research-status Report
The origin and induction processes of hair follicle stem cells
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17K16361
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森田 梨津子 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 研究員 (20700040)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ex vivo live imaging / 1細胞transcriptome / hair follicle |
Outline of Annual Research Achievements |
成体組織幹細胞は、胎仔(児)性の組織前駆細胞の集団から、増殖と分化の時空間的発展の結果生み出される。これまでの幹細胞研究により、組織幹細胞が維持・増殖・分化する仕組みの理解は進んだが、幹細胞が正しい場所に正しい時に誘導される(生み出される)機構については、ほとんど理解されていない。組織幹細胞の発生過程の解析が進まない一因に、初期幹細胞を標識しうるマーカー遺伝子がいまだ同定されていないことが挙げられる。本研究では、マウス毛包発生における毛包表皮幹細胞の誘導をモデルとし、マーカーに依存しない2つの新手法: 1) 1細胞解像度での毛包器官発生の4次元イメージングと、2) 1細胞トランスクリプトームを統合させたマルチオミックスデータの統合的解析から、毛包表皮幹細胞の起源と誘導メカニズムをこれまでにない解像度で理解することを目指した。本年度は、マウス毛包器官発生の4次元ライブイメージングにより同定された毛包幹細胞の前駆細胞とその周囲細胞の細胞状態の変遷を明らかにするために、毛包陥入が起こる前後から、胎仔性幹細胞集団の区画化が完成するまでの胎齢12.0日、13.0日、14.0日、15.0日、17.0日の5ステージについて、幹細胞前駆細胞と分化細胞を含む細胞集団を分取し、1細胞RNA-seqを実施した。得られた1細胞トランスクリプトームデータは、主成分分析、tSNE法などの次元圧縮法を用いることで複数のクラスターに分類し、各細胞クラスターに特徴的な遺伝子の発現部位をin situ hybridization法で逐一検出することで、各クラスターの毛包組織内の局在を確認した。現在は、位置情報を元に、ライブイメージング解析の中で得られた細胞系譜と、バイオインフォマティクス解析の中で得られたin silico細胞系譜の対応をとり、幹細胞の発生系譜とその誘導過程で機能する遺伝子群を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたとおり、すでに毛包発生過程(胎齢12.0-17.0日)の細胞動態解析から幹細胞の発生系譜とその発生予定領域を同定するとともに、対応する発生ステージの1細胞トランスクリプトームデータを取得し解析することで、幹細胞のin silico発生系譜を明らかにした。さらに現在、ライブイメージング解析の中で得られた細胞系譜と、バイオインフォマティクス解析の中で得られたin silico細胞系譜の対応をとることで、毛包幹細胞の前駆細胞の細胞状態が他の細胞とどのように異なるのか、またどのような状態変化を経て組織幹細胞へと発展するのかをより詳細に明らかにするため解析を進めている。これまでに、幹細胞の前駆的な細胞で発現すると期待される新規分子マーカーを同定し、幹細胞の発展過程で変動するシグナルパスウェイを明らかにしており、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定された、幹細胞の前駆的な細胞で発現すると期待される、新規分子マーカーのCreERT2 knock-in マウスの作出を計画中である。今後は、この細胞系譜の細胞を遺伝学的に標識し、細胞の配置や分化運命をin vivo 系譜追跡により詳細に明らかにする予定である。さらに、幹細胞の誘導過程で動くシグナルネットワークを、siRNAによるノックダウン、薬理学的阻害剤や活性化剤の添加、レーザーアブレーションによるシグナルソースとなる細胞の除去等を行うことで摂動し、毛包上皮幹細胞の誘導に強く寄与する分子を同定することを目指す。また本研究成果を発表するために論文執筆をすすめる。
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Causes of Carryover |
昨年度は、研究発表を行った会議が、遠隔地ではなく比較的近隣にて開催されたため、旅費が予定使用額を下回る結果となった。また、バイオインフォマティクス解析を中心に実施したため、実験費用があまりかからなかった。 次年度は、当初より予定していた旅費20万円、顕微鏡等のレンタル機器使用費として27万円、実験試薬・消耗品費43万円の他に、複数の遺伝子組換え動物の作出を計画しており、動物作製費及び飼育費として180万円程度の支出を予定している。
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