2017 Fiscal Year Research-status Report
精神疾患死後脳における分子発現変化の脳内分布解明のための内部標準遺伝子同定
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17K16372
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
川端 梨加 金沢大学, 医学系, 研究員 (70726207)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 死後脳 / 大脳皮質 / RNA integrity number |
Outline of Annual Research Achievements |
精神疾患の病態を分子レベルで解明するためには、症状の発現に関わると考えられる分子発現の変化を把握する必要があり、推定される分子メカニズムを治療法の開発に役立てるためには、分子発現変化の脳内分布を明らかにする必要がある。このような分子発現変化の脳内分布をmRNAレベルで正確に把握するためには、①異なる領域間におけるRNAの保存状態の比較と、②疾患の有無や領域の違いにより発現量に影響を受けない内部標準遺伝子の同定が必要である。そこで本年度は、統合失調症例と健常例の死後脳組織を用い、異なる4つの大脳皮質領域からRNAを抽出し、疾患の有無そして領域の違いがRNAの保存状態に及ぼす影響を評価した。まず、統合失調症例と性別が同じで年齢や死後経過時間などが近い健常対照例のペア20組のそれぞれの症例から、背外側前頭前野、頭頂葉後部、2次視覚野、1次視覚野から背白質を切り出しTrisol液攪拌しRNAを抽出した。そして、40症例の4領域から得られた160サンプルについて、RNAの保存状態をAgilent社製のBioanalyzerを用いてRNA Integrity Number (RIN)として計測した。その結果、統合失調症例では、背外側前頭前野8.37±0.55、頭頂葉後部8.09±0.65、2次視覚野7.65±0.86、1次視覚野7.32±0.87で、健常例では、背外側前頭前野8.52±0.36、頭頂葉後部8.60±0.24、2次視覚野8.40±0.39、1次視覚野8.41±0.52というRINデーターが得られた。これにより、RNAの保存状態は、健常例では4領域とも同様に良好であるのに対して、統合失調症例では後頭部で低下する傾向があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
40症例の4領域のすべてからRNAを抽するのに予想以上の時間を有した。最終的に、160サンプルを調整し、すべてのサンプルについてRINの計測の1回目を終えることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた160のRNAサンプルを用い、RNAの保存状態(RIN)の計測をもう一度繰り返し、1回目と2回目の測定値の間の相関を評価することで、RIN計測の精度を評価する。また、これらのサンプルを用いて最低3種類の内部標準遺伝子の断片をreal-time PCRで増幅し、疾患の有無、領域の違いが、内部標準遺伝子の発現にどのような影響を及ぼすのか検討する。
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Causes of Carryover |
40症例の4領域からのRNAの抽出に時間を要し、BioanalyzerによりRNA保存状態の計測が1回のみとなり、2回目の計測および得られたRNAサンプルを用いたreal-time PCRを次年度に行うことになった。
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