2017 Fiscal Year Research-status Report
母親の精神的健康と児の発達や行動の関係、及びこれらに影響する心理社会的要因の検討
Project/Area Number |
17K16375
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森川 真子 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (60783305)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 周産期 / 母児 / 抑うつ状態 / 心理社会的要因 / 愛着障害 / ソーシャルサポート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、周産期の母児を取り巻く心理社会的環境が母親の精神的健康のみならず、養育行動や児の情緒的問題に関しても影響をもたらし得るのではないかという仮説に基づき、申請者の所属する研究グループが集積している周産期女性コホートを用いて、周産期における母親の精神的健康、児の心理的・情緒的発達特性や適応行動、母児を取り巻く心理社会的要因について調査し、それらが相互に与える影響について関係性を明らかにすることを目的としている。 今年度は、養育機能との関与が指摘されている母親から子へ向けた愛着形成の問題、いわゆる、ボンディング障害に関する検討を行った。まず、我々の研究で用いているボンディング障害の評価尺度であるMother-to-Infant Bonding Questionnaire (MIBQ) の周産期女性における信頼性と妥当性を確認した (BMC Psychiatry 2016)。さらに、ボンディング障害と関連する要因として、母親の抑うつ状態が明らかとなった(Psychiatry Clin Neurosci. 2017)。しかしながら、双方の因果関係については未明確のままであったことから、さらに、二者間に存在する交絡要因を含めた検討が必要と考え、ボンディング障害と抑うつ状態の心理社会的要因と指摘されていたソーシャルサポートの乏しさの三要因を含めて、周産期女性が主観的に認識しているソーシャルサポートの有無がボンディング障害及び抑うつ状態に与える影響について検討した (Sci Rep. 2017 )。その結果、周産期女性が感じている妊娠期のソーシャルサポートの提供者の数と満足度の双方が、産後のボンディング障害と抑うつ状態に対して保護的な働きを持ち得ることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、すでに申請者が所属している研究グループが集積を行っている周産期女性コホートを用いて、母親の精神的健康と心理社会的要因との関係の調査に加えて、その出生児の心理的・情緒的発達特性や適応行動に関する調査を新たに開始し、平成29年度及び平成30年度末までに生後12か月になる児とその母親200組を組み入れる計画をしているが、現段階では児に関する調査は組み入れの準備を整えている段階である。児に関するデータ収集は目標数に達していないが、母親の養育機能や抑うつ状態に関連するボンディング障害について論文発表を行うなど達成度の高い部分もあるため、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も周産期女性コホートを用いた、母親の精神的健康と心理社会的要因との関係の調査を進めるとともに、出生児の心理的・情緒的発達特性や適応行動に関する調査の準備、及び研究協力者のリクルートを進め、データの集積を行っていく。データが集積した時点でデータ解析を開始する。目的変数に、母親の抑うつ状態や不安、母親から児への愛着、児の発達(自閉スペクトラム症)特性や情緒的発達・適応行動、説明変数に、母親の年齢等の生活状況、抑うつ状態、児への愛着、対人応答性、並びに児の性別・自閉スペクトラム症特性等を入れて、重回帰分析を行い、目的変数に対する寄与率を検討する。評価尺度の因子構造に関する探索的及び確認的因子分析、さらに各因子の関係性の検討に共分散構造分析を施行する。平成32年度には、以上についてまとめ、学会発表・論文発表を行いたい。
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Causes of Carryover |
本研究では、すでに申請者が所属している研究グループが集積を行っている周産期女性コホートを用いて、母親の精神的健康と心理社会的要因との関係の調査に加えて、その出生児の心理的・情緒的発達特性や適応行動に関する調査を新たに開始し、平成29年度及び平成30年度末までに生後12か月になる児とその母親200組を組み入れる計画をしているが、現段階では児に関する調査は組み入れの準備を整えている段階であるため、平成29年度に使用する予定であった経費を使用しなかったため、次年度使用額が生じたため。
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Research Products
(4 results)