2019 Fiscal Year Research-status Report
母親の精神的健康と児の発達や行動の関係、及びこれらに影響する心理社会的要因の検討
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17K16375
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森川 真子 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (60783305)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 周産期 / 抑うつ状態 / 母児 / うつ病既往 / 生物学的 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度、産後の母親の抑うつ状態、および、母親から子へ向けた愛着形成の問題(ボンディング障害)と、妊娠期に女性が主観的に認識しているソーシャルサポートとの関係を検証した。昨年度は、母親の被養育体験およびソーシャルサポートと、産後のボンディング障害との関係を検証した。また、虐待や自死にも関連する躁状態、および、抑うつ状態の評価尺度の因子構造、全周産期期間における信頼性・妥当性も確認した。さらに、東日本大震災と非被災地に住む周産期女性への影響についても検証した。 今年度は、産後の抑うつ状態に関する危険因子の検証を行った。今までうつ病の既往の有無にかかわらず検証を行ってきたが、うつ病の既往は、妊娠期の損害回避的認知および抑うつ状態の危険因子となった。さらに、妊娠期の損害回避は、産後1か月の損害回避と抑うつ状態を予測し、妊娠期の抑うつ状態は産後抑うつ状態を予測した(Front Psychiatry, 2019)。これらから、うつ病の既往、および、妊娠期の損害回避的認知は、産後うつ病の危険因子であると考えられた。さらに、生物学的な因子として、環境因子によって引き起こされるDNAメチル化が産後抑うつ状態の危険因子となるかについて検証したところ、産後抑うつ状態とaxon guidance(神経回路を形成する重要なプロセス)との関連が示唆された(BMC Psychiatry, 2019)。さらに、妊娠期および/または産後に抑うつ状態を有する女性のトリプトファン(TRP)代謝産物の血漿中濃度の変化を調べた(J Affect Disord., 2019)。妊娠期にキヌレニン(KYN)およびキヌレン酸(KA)、および、KYN / TRP、KA / KYNの血漿値が高く、産後の3-ヒドロキシアントラニル酸(3HAA)の血漿値が低いことは、産後抑うつ状態の予測マーカーとして有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、すでに申請者が所属している研究グループが集積を行っている周産期女性コホートを用いて、母親の精神的健康と心理社会的要因との関係の調査に加えて、その出生児の心理的・情緒的発達特性や適応行動に関する調査を新たに開始し、平成29年度及び平成30年度末までに生後12か月になる児とその母親200組を組み入れる計画をしていたが、現段階では児に関する調査は組み入れの準備を整えている段階である。児に関するデータ収集は目標数に達していないが、母親の養育機能や抑うつ状態、虐待に関連するボンディング障害、および躁状態に関する評価尺度の妥当性の検証について論文発表を行うなど達成度の高い部分もあるため、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も周産期女性コホートを用いた、母親の精神的健康と心理社会的要因との関係の調査を進めるとともに、出生児の心理的・情緒的発達特性や適応行動に関する調査の準備、及び研究協力者のリクルートを進め、データの集積を行っていく。データが集積した時点でデータ解析を開始する。目的変数に、母親の抑うつ状態や不安、母親から児への愛着、児の発達(自閉スペクトラム症)特性や情緒的発達・適応行動、説明変数に、母親の年齢等の生活状況、抑うつ状態、児への愛着、対人応答性、並びに児の性別・自閉スペクトラム症特性等を入れて、重回帰分析を行い、目的変数に対する寄与率を検討する。評価尺度の因子構造に関する探索的及び確認的因子分析、さらに各因子の関係性の検討に共分散構造分析を施行する。 今年度は最終年度であるが、研究実施の準備が難航しており、今年度データ収集を行うといった状況であるが、可能な限りデータ収集、およびデータ解析を行いたい。
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Causes of Carryover |
研究準備が難航しており、予算が十分使用できていないため、今年度に持ち越し、研究実施準備、および、データ解析に使用する。
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