2020 Fiscal Year Research-status Report
母親の精神的健康と児の発達や行動の関係、及びこれらに影響する心理社会的要因の検討
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17K16375
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森川 真子 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (60783305)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 周産期 / 抑うつ状態 / うつ病既往 / ソーシャルサポート / 希死念慮 / 初産婦 / 経産婦 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度、産後の母親の抑うつ状態、および、母親から子へ向けた愛着形成の問題(ボンディング障害)と、妊娠期に女性が主観的に認識しているソーシャルサポートとの関係を検証した。二年度目は、母親の被養育体験およびソーシャルサポートと、産後のボンディング障害との関係を検証した。また、虐待や自死にも関連する躁状態、および、抑うつ状態の評価尺度の因子構造、全周産期期間における信頼性・妥当性も確認した。さらに、東日本大震災と非被災地に住む周産期女性への影響についても検証した。三年度目は、産後の抑うつ状態に関する危険因子の検証を行ない、うつ病の既往が、妊娠期の損害回避的認知および抑うつ状態の危険因子であることや生物学的な関連因子を明らかにした。 今年度は、大うつ病の既往が周産期うつ病の危険因子の一つであることから、うつ病の既往を評価するための尺度である、日本語版Inventory to Diagnose Depression, Lifetime version (IDDL)の周産期女性における信頼性・妥当性、および因子構造を確認した(PLoS One, 2020)。また、周産期女性の自殺念慮は、母親自身および児へのケアの不足や虐待、心中等につながる因子であり重要であることから自殺念慮の危険因子の解明を行なったところ(Front Psychiatry, 2020)、うつ病の既往および、母親自身が認識していたソーシャルサポートの質が関連していたことが明らかとなった。さらに、初産婦と経産婦における違いについて調べたところ(Scientific reports, 2020)、初産婦は経産婦に比べてマタニティブルーや産後の抑うつ状態を経験する割合が高く、不安スコアも高かった。産後抑うつ状態であった初産婦は、それがなかった群と比べてソーシャルサポートを提供してくれる人数が少ないと感じていたことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、すでに研究代表者が所属している研究グループが集積を行なっている周産期女性コホートを用いて、母親の精神的健康と心理社会的要因との関係の調査に加えて、その出生児の心理的・情緒的発達特性や適応行動に関する調査を新たに開始し、平成29年度及び平成30年度末までに生後12か月になる児とその母親200組を組み入れる計画をしていたが、昨年度までは児に関する調査の組み入れの準備を整えている段階であった。昨年度の途中からCOVID-19感染症の拡大に伴い、感染拡大防止策から研究協力者の組み入れを行なっていた母親教室が2020年度末まで全て中止となったため、協力者組み入れについては現在中断している状況である。児に関するデータ収集は目標数に達していないが、母親の養育機能や抑うつ状態、虐待に関連するボンディング障害、および躁状態に関する評価尺度の妥当性の検証について論文発表を行うなど達成度の高い部分もあるため、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も周産期女性のコホートを用いた、母親の精神的健康と心理社会的要因との関係の調査を進めるとともに、出生児の心理的・情緒的発達特性や適応行動に関する調査の準備、及び、COVI-19感染拡大防止対策を行なった上で母親教室が再開されたり、オンラインで研究協力を呼びかけるシステムづくりを行ったりするなどして、研究協力者のリクルートを再開し、進めることでデータの集積を行なっていく。データが集積された時点で、データ解析を開始する。目的変数に、母親の抑鬱状態や不安、母親から児への愛着、児の発達(自閉スペクトラム症)特性や情緒的発達・適応行動、説明変数に、母親の年齢等生活状況、抑鬱状態、児への愛着、対人応答性、並びに児の性別・自閉スペクトラム症特性等を入れて、重回帰分析を行い、目的変数に対する寄与率を検討する。評価尺度の因子構造に関する探索的及び確認的因子分析、さらに各因子の関係性の検討に共分散構造分析を施行する。 すでに予定の研究期間は終了しているが、研究実施の準備が難航していたり、最終年度がCOVID-19に伴い研究協力者の組み入れを行うことができなかったりしたことから次年度データ収集を行うといった状況であるが、可能な限りデータ収集、およびデータ解析を行いたい。
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Causes of Carryover |
研究準備が難航しており、またCOVID-19感染拡大に伴い、研究協力者の組み入れが中断したことから、予算が十分使用できていないため、次年度に持ち越し、研究実施準備、および、データ解析に使用する。
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Research Products
(3 results)