2017 Fiscal Year Research-status Report
Connectome in Gambling Disorder
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17K16376
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鶴身 孝介 京都大学, 医学研究科, 助教 (20760854)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経科学 / ギャンブル障害 / 依存症 / MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
ギャンブル障害 (Gambling Disorder: GD) 患者群及び健常対照群のリクルートを行った。各被験者に対し、心理学的検査、行動経済学を取り入れた行動実験を行った。続いて、大学設置のMRI装置にてT1強調3D画像、拡散テンソル画像、および行動経済学課題を用いた脳機能画像、安静時の脳機能画像を撮影した。 まずGD患者の安静時における脳機能活動の全体的な傾向を把握するため、独立成分分析を行い、主要な大規模脳ネットワークの振幅を検討した。GD群では検討したもののうち多くのネットワークにおいて、その振幅が減少していた。また、GD群における大規模脳ネットワークの振幅は罹病期間と負の相関を示していた。 GD群における大規模脳ネットワークにおける振幅低下は、嗜癖患者において提唱されている動的なネットワーク切り替え障害に寄与している可能性やネットワーク組織化不全を示唆している可能性もある。これは嗜癖患者のコネクトームに影響を与える知見であると考えられる。 また、確率割引に着目した行動実験ではGD患者は健常群と比較して利益の確率を高く見積もることが示唆された。また、GD患者は健常群と比較して左扁桃体が萎縮しており、その容量は利益の確率を高く見積もる度合いを示す指数と負の相関を示した。すなわちGD患者における扁桃体容量低下は利益の確率を高く見積もる度合いと相関し、より危険な意思決定に繋がっていると考えられる。 また、埋没費用効果に着目した行動実験ではGD群において、埋没費用効果を示す指標と賭博中断期間が負の相関、罹病期間が正の相関を示した。埋没費用効果条件をコントロール条件と比較した際にはGD群は健常群と比較して背内側前頭皮質の活動が低下しており、活動の程度と罹病期間は負の相関を示した。これはGD患者が負けを深追いしてギャンブルから抜けられなくなる現象の神経基盤であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
医療機関に繋がることが少なくリクルートの難しいギャンブル障害患者群、及び健常対象群の画像・遺伝子・心理検査データを順調に収集出来ている。コネクトーム解析のセットアップに時間を要してはいるが、様々な解析も随時行っており、GD患者における安静時機能的結合に関する予備的な結果も報告出来ている。また、行動実験データと脳構造画像の関連を検討した成果や、行動経済学課題を行った際の脳活動を検討した成果をそれぞれ論文化し英文誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ギャンブル障害患者及び健常対照群のリクルートを継続し、心理検査データ、行動実験データ、灰白質・白質の構造画像データ、課題時及び安静時機能画像データ、遺伝子データをさらに蓄積していく。そうしてデータベースをより強固なものにしていき、よりインパクトの高い研究を目指す。 データ収集と並行してデータ解析を継続する。より新しい解析方法についても習得を目指し、その結果について国内外の学会で発表を行う。 そして最終的には英文誌に投稿し受理を目指す。 こうして得られた成果を社会に発表し、臨床現場への還元を目指していく。
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Causes of Carryover |
(理由)コネクトーム解析のセットアップに時間を要したこともあり、遺伝子データの解析を本格的に行うまでに至らなかったため。 (使用計画)遺伝子データの解析に用いるキット、プローブなどの購入に主に宛てる予定である。
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