2017 Fiscal Year Research-status Report
隔離飼育ラットの社会性障害に対するオキシトシンの治療効果
Project/Area Number |
17K16384
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
田中 健二朗 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (30552260)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 社会行動 / オキシトシン / 視床下部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では離乳後にケージメイトから引き離す社会的隔離が社会性の発達に及ぼす影響について、ラットを用いて解析がなされた。社会性は新奇物体よりも新奇動物を好む傾向(社会的嗜好性)を社会的嗜好性試験によって、また新奇動物に対する不安(社会不安)を社会的回避試験によって行動学的に評価された。離乳後の隔離はこれらの社会行動に性特異的な影響を及ぼした。オスの隔離飼育群では集団飼育群に比べて社会的嗜好性が高く、メスでは低下していた。また社会不安はオスでは両群間に有意な差は見られなかったが、メスでは隔離飼育群において亢進していた。これらはラットの社会性が離乳後は未発達で周囲の環境の影響を受けて成熟していくものであること、またその経過には性差があることを示唆している。しかしながら、その生理的メカニズムは不明である。そこで本研究ではさらに、ラットを見知らぬ他個体に曝露した後、視床下部オキシトシン産生細胞の活動レベルをFos蛋白質の発現を指標として免疫組織化学法により解析した。オスの視床下部オキシトシン産生細胞におけるFos発現数および割合は集団飼育群と隔離飼育群の間に有意な差は見られなかった。一方、メスの隔離飼育群におけるオキシトシン産生細胞のFos発現数は集団飼育群のものと比べて有意に少なく、またその割合も低かった。これらは社会行動の発達において下垂体後葉ホルモンのひとつであるオキシトシンが関わっている可能性を示唆するものであり、今後の研究にとって極めて有用な足掛かりとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はこれまでに幼若ラットの社会的隔離が社会的嗜好性の変化や社会不安の亢進といった社会行動の異常を引き起こすことを明らかにした。さらに組織学的解析から、隔離ラットの行動学的性質に視床下部オキシトシン細胞の活動性の低下が関わっている可能性を示した。実験は研究の目的に沿って行われ一定の成果が挙げられていることから、本研究は順調に進んでいると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では今後、これまでに得られた知見に基づいて、幼若ラットの社会的隔離による社会行動の異常がオキシトシンの補充によってリカバリーされるかどうかについて同様の行動試験を用いて評価する。これによって社会性障害に対するオキシトシンの治療効果を検証し、病態解明や治療法開発に貢献する。
|
Research Products
(1 results)