2017 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー型認知症バイオマーカーとしての松果体体積の臨床応用
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17K16392
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
松岡 照之 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40636544)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 松果体体積 / アルツハイマー型認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー型認知症(AD)患者の診断補助には海馬体積測定がよく用いられているが、松果体体積も利用できるか検討した。京都府立医科大学附属病院認知症疾患医療センターを受診した患者の内、抗認知症薬や向精神薬は内服しておらず、頭部MRI (3T, MPRAGE)を施行していたAD患者63名、軽度認知障害(MCI)患者33名、健常者24名を対象とした。ADとMCIの鑑別におけるarea under the curve (AUC)は松果体体積のみの場合0.641、海馬体積のみの場合0.765、海馬体積と松果体体積を組み合わせた場合0.777であり、海馬体積と松果体体積を組み合わせた方が海馬体積のみよりも診断能が有意に高かった。ADと健常者の鑑別におけるAUCは松果体体積のみの場合0.770、海馬体積のみの場合0.925、海馬体積と松果体体積を組み合わせた場合0.960であり、海馬体積と松果体体積を組み合わせた方が海馬体積のみよりも診断能が有意に高かった。以上から松果体体積は海馬体積と組み合わせることにより、ADの診断補助に利用できるかもしれないことが示唆された。 松果体体積とADの睡眠障害との関係についても調べた。メラトニン分泌量は松果体体積と正の相関をすると言われているため、AD患者の睡眠障害は、松果体体積の低下によるメラトニン分泌量の減少が関与している可能性があると考えた。そのため、AD患者において睡眠障害を認める群と認めない群で松果体体積を比較したが有意差は認めなかった。しかし、楔前部の体積が睡眠障害を認める群で有意に低下していた。AD患者の睡眠障害には松果体は関与していないことが示唆されたが、MCIやpreclinical stage of ADなどAD発症の前段階では松果体が関与している可能性があり、今後研究が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
松果体体積減少がアルツハイマー型認知症(AD)に特異的な所見であるのかを検討するために、京都府立医科大学附属病院認知症疾患医療センターを受診した患者を対象に疾患毎の松果体体積を測定して比較する研究を立ち上げ、当大学医学倫理医学倫理審査委員会の承認を受けた。具体的には、外来初診時に年齢、性別、教育歴、服薬の有無、既往歴、生活環境などの患者背景、認知機能評価、精神症状評価、頭部MRI画像などのデータを収集している。 また、松果体体積減少とAD発症との因果関係の検討をするために、上記対象者を縦断的に経過観察も行っている。 松果体体積の概日リズムの検討に関しては、京都府立医科大学附属病院精神科病棟に入院したアルツハイマー型認知症患者を対象に8時と17時に頭部MRIを施行して、松果体体積の違いを調べ、同時刻に採血も行い、血清メラトニン濃度も測定し、血清メラトニン濃度の概日リズムおよび松果体体積と血清メラトニン濃度との関係も調べる予定であった。しかし、血清メラトニン濃度の概日リズム測定に関して予定していた8時と17時の測定では、概日リズムの測定ができないため、研究デザインの見直しが必要であり、現在、先行研究を調査したり、専門の医師に問い合わせて検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、データ収集を継続し、疾患毎の松果体体積を比較して、松果体体積減少がアルツハイマー型認知症(AD)に特異的な所見であるのかを検討する。また、外来患者のうち、AD患者、軽度認知障害(MCI)患者および健常者を縦断的に経過観察し、松果体体積が減少してからADが発症するのか、ADが発症してから松果体体積が減少するのかを検討する。 松果体体積の概日リズムの検討に関しては、引き続き、先行研究を調べたり、専門の医師に問い合わせるなどして、研究デザインを見直し、検討していく。 これらの上記研究を通して、松果体体積測定が臨床応用可能であるかどうかを検討していく。 該当患者が少ない場合、京都市内にある関連病院の外来患者で対象になる方の参加を呼びかけたり、関連病院での共同研究を積極的に進める。健常者に関しては、公募でも研究参加を募る予定である。データ収集が困難であれば、Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative (ADNI)などのデータを利用して、解析することも検討する。
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Causes of Carryover |
データ収集を開始したところであり、まだデータ数が少ないため解析は行えていない。解析のためにパソコン、解析ソフトを購入予定であったが、データ数が増えて解析可能な状態になった段階で購入予定である。メラトニン濃度測定に関しては、現在測定方法について検討中であり、平成29年度に費用は発生しなかった。今後、研究デザインを検討し、必要であればメラトニン濃度測定を行う。 健常者の研究参加はまだ公募できておらず、健常者への謝金として計上していた金額を使用できなかった。研究補助員に関してもまだ採用しておらず、謝金は発生していない。 一方で、「松果体体積と海馬体積を利用したアルツハイマー型認知症の診断について」という演題で学会発表するために、第22回日本神経精神医学会に参加したため、旅費の金額が予定を上回った。また、論文が予定よりも早く作成でき、その論文をオープンアクセスにするために助成金を使用した。
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