2018 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー型認知症バイオマーカーとしての松果体体積の臨床応用
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17K16392
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
松岡 照之 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40636544)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 松果体体積 / アルツハイマー型認知症 / 睡眠障害 / 軽度行動障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
松果体体積とアルツハイマー型認知症(AD)の睡眠障害との関係について調べたところ、関係性は認めなかった。しかし、睡眠障害があるとAD発症の危険性が高まると考えられており、軽度認知障害(MCI)やAD発症の前段階では松果体が関与している可能性がある。また、近年、認知症の診断基準をみたさないが、行動障害を認める状態である軽度行動障害(Mild Behavioral Impairment: MBI)という概念が提唱されており、認知症の前駆段階と考えられている。そこで、睡眠障害とMBIの認知症への移行について調べた。 京都府立医科大学附属病院精神科・心療内科に平成21年4月1日~平成28年3月31日までに外来受診した50歳以上の患者2853名(平均年齢68.9±11.1歳)の診療記録簿を後方視的に調査した。MBIの診断基準をみたす患者は100名であり、全患者の3.5%を占めていた。外来通院していた認知症患者以外の1329名(平均通院期間22.7±23.9ヶ月)の内、新たに認知症を発症したのは77名(5.8%)であり、認知症の罹患率は30.7人/1000人年であった。他の精神疾患と比較した認知症発症のハザード比はMBIは8.07 (p < 0.001)であったが、睡眠障害は0.71 (p = 0.744)であり、認知症発症の危険性は他の精神疾患と有意差はなかった。 MBIの患者は認知症に移行する可能性が高いため、慎重に経過観察する必要があることが示唆された。一方、睡眠障害は認知症発症の危険性を高めていなかったが、平均観察期間が1.9年と短かったために、認知症発症に関係していなかったと考えられた。ADの症状が出現する20年以上前から脳の中では変化が生じていると考えられており、中年期の睡眠障害がAD発症に関与しているのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軽度行動障害(MBI)、睡眠障害、うつ病などの精神疾患の認知症への移行の割合について学会発表した内容を元に現在論文投稿中である。 松果体体積減少がアルツハイマー型認知症(AD)に特異的な所見であるのかを検討するために、京都府立医科大学附属病院認知症疾患医療センターを受診した患者を対象に疾患毎の松果体体積を測定して比較する研究を継続している。具体的には、外来初診時に年齢、性別、教育歴、服薬の有無、既往歴、生活環境などの患者背景、認知機能評価、精神症状評価、頭部MRI画像などのデータを収集している。 松果体体積減少とAD発症との因果関係の検討をするために、Laboratory of Neuro Imaging (LONI) Image & Data Archive (IDA)の許可を得て、北米Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative (ADNI)のデータを用いて解析をしている。ADNI-1のデータを用いて解析を行った結果で抄録を作成し、第34回日本老年精神医学会に採択され、発表予定である。 松果体体積の概日リズムの検討に関しては、アルツハイマー型認知症患者を対象に朝と夜に頭部MRIを施行して、松果体体積の違いを調べ、同時刻に採血も行い、血清メラトニン濃度も測定し、血清メラトニン濃度の概日リズムおよび松果体体積と血清メラトニン濃度との関係も調べる予定であった。しかし、血清メラトニン濃度の概日リズム測定に関して体制が整わず、引き続き研究デザインの見直しが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、データ収集を継続し、疾患毎の松果体体積を比較して、松果体体積減少がアルツハイマー型認知症(AD)に特異的な所見であるのかを検討する。 Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative (ADNI)-1のデータを用いたところ、MCIからADに移行した群とADに移行しなかった群において、ADに移行した群の方が松果体体積が小さい傾向があった(p = 0.053)。この結果を第34回日本老年精神医学会にて発表予定である。今後、ADNI-GO、ADNI-2のデータも加え、松果体体積の継時的変化についても解析する予定である。 松果体体積の概日リズムの検討に関しては、引き続き、先行研究を調べたり、専門の医師に問い合わせるなどして、研究デザインを見直し、検討していく。 これらの上記研究を通して、松果体体積測定が臨床応用可能であるかどうかを検討していく。 該当患者が少ない場合、京都市内にある関連病院の外来患者で対象になる方の参加を呼びかけたり、関連病院での共同研究を積極的に進める。健常者に関しては、公募でも研究参加を募る予定である。
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Causes of Carryover |
メラトニン濃度測定に関しては、現在測定方法について検討中であり、平成29、30年度に費用は発生しなかった。今後、研究デザインを検討し、必要であればメラトニン濃度測定を行う。 健常者の研究参加はまだ公募できておらず、健常者への謝金として計上していた金額を使用できなかった。研究補助員に関してもまだ採用しておらず、謝金は発生していない。 「軽度行動障害(MBI)の頻度、認知症への移行について」という演題で学会し、その内容を元に論文作成し、投稿中であるが、採択はまだされていないため、投稿料が発生しなかった。
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Research Products
(1 results)