2017 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症の脳神経スパイン密度低下におけるRNA結合タンパク質の制御機構の解明
Project/Area Number |
17K16394
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
紀本 創兵 奈良県立医科大学, 精神医学講座, 学内講師 (00405391)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 認知機能障害 / アクチン細胞骨格 / RNA結合タンパク質 / 死後脳研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症では大脳皮質の錐体ニューロンでの樹状突起上の棘突起(=スパイン)の密度の減少、それに伴う機能変化が、認知機能障害に関与していることが想定されている。なお錐体細胞のスパインの形成・可塑性は、神経活動に応じたダイナミクスで制御されており、Gタンパク質共役受容体(以後、GPCR)を介したシグナル変化や、スパインの形態変化に重要なアクチン細胞骨格を制御するCDC42 シグナルの変化がスパイン密度の低下に関与していることが報告されてきた。 本研究では、統合失調症において報告されているGPCRシグナルの制御に必要なRGS4 (Regulator of G-Protein Signaling 4)の低発現、およびCDC42 シグナル 上の遺伝子発現変化に、その上流因子と想定されるRNA結合タンパク質、staufen2(stau2)の発現変化が伴っているか、下流の遺伝子群の発現に関連するかを検証することを目的とする。 本年度は、まずヒト健常対照例の大脳皮質においてstau2遺伝子の発現が大脳皮質に分布するかどうかをまず調べた。死後脳組織は精神神経疾患歴のない2名より得た。それぞれの脳の視覚野から凍結切片を作成し、stau2に特異的な放射活性を有するRNAプローブを作成し、in situ hybridizationを行った。そしてstau2遺伝子の発現は神経細胞で大脳皮質で観察され、形態学的に錐体細胞で高い発現が観察された。次に、性別・年齢などをマッチした健常対照例と統合失調症の20対の前頭前野の全灰白質から抽出されたRNAより、Real-time PCR 法にてStau2、RGS4、アクチン制御遺伝子群のmRNAの発現量を比較した。結果、20対のサンプルにおいてもRGS4やアクチン制御遺伝子群の発現変化は再現された。しかし、Stau2の発現は2群間において有意な差を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに実験は進んだ。しかし、実験の結果が仮説と幾分異なるものもあったことは、今後の検討課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初はmRNAの発現変化を組織レベルで検証するためにin situ hybridizationをおこなう予定であったが、Real-time PCR 法により得られた結果は仮説とは幾分異なるものであった。このため、in situ hybridizationやタンパクレベルでの検証に必要なWestern blot法などに必要な物品費の購入費は繰り越しとなった。stau2は細胞および皮質層特異的な変化を来している可能性、variantレベルでの変化を来している可能性を考慮し、今後も引き続きReal-time PCR 法による解析をおこない、更にはdual in situ hybridizationや、laser microdissection法による細胞レベル、皮質層レベルでの解析を行うために必要な費用として使用する予定である。
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Causes of Carryover |
当初はin situ hybridizationやWestern blot法の解析に必要な抗体の選定をおこなう予定であった。しかし、Real-time PCR 法により得られた結果は仮説とは幾分異なるものであったため、実験法が変更となり物品費の購入が繰り越しになった。 stau2は細胞および皮質層特異的な変化を来している可能性、variantレベルでの変化を来している可能性を考慮し、今後も引き続きReal-time PCR 法による解析に必要な試薬、プライマー作成費、更にはdual in situ hybridizationや、laser microdissection法による細胞レベル、皮質層レベルでの解析を行うために必要な物品費に計上する予定である。
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Research Products
(2 results)