2017 Fiscal Year Research-status Report
低酸素/低栄養のmTOR・AMPKを介したDNA修復制御による放射線抵抗性の解明
Project/Area Number |
17K16416
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村田 泰彦 東北大学, 医学系研究科, 助教 (40716172)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 放射線感受性 / 低栄養状態 / 低酸素状態 / ATM / AMPK / mTOR |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床的には低酸素細胞は必ず低栄養状態にある。また低酸素による放射線抵抗性の機序は曖昧であった。これまで研究代表者は低グルコース状態がエネルギーバランスのセンサーであるAMPKとその下流に位置するmTORを介して放射線抵抗性を誘導することを明らかにしてきた。 研究代表者はさらに低酸素状態と低グルコース状態が放射線感受性に及ぼす影響について線維芽細胞を用いて検討した。低酸素および低グルコースとすると生存率は高くなり、低酸素状態のみよりもさらに強い放射線抵抗性を示すことを明らかにした。このときmTORをノックダウンしても生存率は低酸素単独と同程度で放射線抵抗性に変化は認められなかった。しかし、AMPKをノックダウンするとDNA2重鎖切断修復酵素ATMの発現が著しく低下し、同時に低酸素および低グルコース処理細胞の生存率は低下し、低酸素単独と同程度の放射線抵抗性となった。これらの結果は、低栄養状態の放射線感受性だけでなく、低酸素状態並びに低酸素および低栄養状態の放射線抵抗性に ATM が関与している可能性を初めて明らかにした極めて重要な発見である。以上のことから、低酸素・低栄養による放射線抵抗性の機序としてDNA2重鎖切断修復酵素の発現または活性の変化が関与している可能性が考えられる。研究代表者は研究内容を発展させ、ATMと同じタンパク質ファミリーに属するDNA2重鎖切断修復酵素に着目し、低酸素および低グルコース状態によるタンパク質発現および活性化への影響、それに伴う放射線感受性の変化を解析している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、低酸素および低栄養状態においては低酸素単独より生存率の高い、より強い放射線抵抗性となることが明らかとなった。さらにこの放射線抵抗性にエネルギーセンサーとして知られるAMPKおよびDNA2重鎖切断修復酵素ATMの関わる可能性を報告した。これは代謝とDNA2重鎖切断修復酵素の関係性だけでなく低酸素・低栄養による放射線抵抗性の機序としてDNA2重鎖切断修復酵素の発現または活性の変化が関係し得ると考えられ意義深い。このことから本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
低酸素および低栄養による放射線抵抗性の機序としてエネルギー代謝およびDNA2重鎖切断修復酵素ATMが関与している可能性を示した。今後の研究の推進方策としては、低酸素または低栄養状態におけるATMおよび同じタンパク質ファミリーに属するDNA2重鎖切断修復酵素の発現および活性化が放射線感受性に及ぼす影響、さらにはエネルギーセンサーであるAMPK/mTORとの情報伝達経路を解明する。DNA2重鎖切断酵素は同じ蛋白質ファミリーに属し、核内だけでなく細胞質にも多量に存在していることが他の研究報告からも明らかであることから、ATMだけでなく他のDNA2重鎖切断修復酵素もAMPK/mTORによって制御されている可能性が高い。コロニーフォーメーションアッセイによる低酸素かつ低栄養状態における細胞の生存率解析、ウェスタンブロット法によるDNA2重鎖切断修復酵素の発現・活性化および上下流のシグナル伝達解析やsiRNAによる特異的抑制を実施し、AMPK/mTORとDNA2重鎖切断修復酵素間の情報伝達経路を明らかにする予定である。
|
Causes of Carryover |
理由:得られた実験結果を受けて購入を予定していた抗体が変更となったことに加え、実験手法の改善により予定していた試薬類の消費を大幅に抑えることができたため。 使用計画:低栄養および低酸素状態におけるDNA2重鎖切断修復酵素の発現および活性化が放射線感受性に及ぼす影響を解明するために以下の消耗品を使用予定である。タンパク質検出に係る抗体やメンブレン類、細胞培養実験に用いる新規細胞株、培養液、ディッシュ、ピペット等の細胞培養関連製品に加え、siRNAの作成・購入、阻害剤の購入といった消耗品を想定している。また、学会参加や打ち合わせ等の出張に伴う旅費、その他、論文投稿に係る英文校正や投稿料などが見込まれる。
|
Research Products
(3 results)