2018 Fiscal Year Research-status Report
間欠的低酸素領域を標的とした温熱による効率的な陽子線治療法の確立
Project/Area Number |
17K16418
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関野 雄太 筑波大学, 附属病院, 医員 (50795713)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 温熱療法(ハイパーサーミア) / オンコサーミア / 細胞死 / 放射線治療 / 陽子線治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、種々のがん細胞を用いて新規低出力温熱治療装置オンコサーミア(以下、OT)による加温治療が、ウォーターバス(以下、WB)などの温水循環による加温と比べて優位に強い生物効果を示すことを明らかにしてきた。また、間欠的酸素環境に置かれ、放射線に抵抗性を獲得したがん細胞に対するOTの有効性も確認してきた。今年度は、担癌マウスモデルを用いて温熱処理および放射線(X線)との併用効果を検証し、抗腫瘍効果に関わる分子メカニズム的な解析を行った。その結果、担癌マウスにおいてOTはWBに比べ優位に腫瘍増殖を抑制し、腫瘍内細胞を死滅させることが明らかとなった。さらに、X線との併用においてもOTはWBに比べ高い温熱増感比(Thermal enhancement ratio:TER)を示し、41℃ではWBの1.1に対しOTは2.1を示し、43℃ではWBの1.3に対しOTは2.3を示した。腫瘍内細胞の分子メカニズム的な解析を行った結果、OT処理群ではWB処理群に比べ優位にアポトーシス、ネクローシス、オートファージーなどの細胞死が高頻度に誘導され、放射線と併用することでさらに増強された。また、OT処理はWB処理に比べ、Baxなどのアポトーシス誘導因子を活性化し、Bcl-2やp-Aktなどの抗アポトーシス遺伝子を抑制することで、Caspase-8やCaspase-9を誘導しアポトーシスを増強すること、およびmTORなどのオートファジー誘導因子を更新させることで、オートファジーを増強することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
癌マウスモデルを用いて温熱処理および放射線(X線)との併用効果を検証し、抗腫瘍効果に関わる分子メカニズム的な解析を行うことができたため
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を踏まえ、オンコサーミア(OT)およびウォーターバス(WB)による加温と臨床で用いている高エネルギー陽子線による併用効果について調べ、X線との差異について検討する。また、同じくRF波を用いて加温を行うハイパーサーミア(HT)装置サーモトロンIV(山本ビニター社)の貸与が可能となったため、加温方法として追加し、OT、HT、WBによる効果の比較を行う。通常の細胞致死効果などの検討に加えて、マイクロアレイなどを用いた網羅的な遺伝子発現解析を予定しており、これにより各種温熱モダリティーの加温による細胞内遺伝子発現変化の差異が明確となり、各々に適した抗がん剤や放射線などの併用療法の選定および各々の効果を最大限に発揮する治療スキームの提案が可能となるような知見の蓄積を実施する。
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