2017 Fiscal Year Annual Research Report
悪性がん特異的糖代謝経路による放射線抵抗性機構の解析と放射線治療効果増感への展開
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17K16433
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 容子 京都大学, 医学研究科, 助教 (60755651)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射線抵抗性 / グルコース代謝 / HIF-1 / UCHL1 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞特異的な糖代謝経路が放射線抵抗性を亢進するメカニズムは不明である。低酸素誘導性転写因子HIF-1は、固形腫瘍内の低酸素領域でがん細胞の悪性化を誘導する因子として知られている。一方で近年、HIF-1は有酸素環境下でも活性化して機能し得ること、また、がん細胞特異的なAerobic Glycolysisを誘導する機能をもつことが明らかになりつつあり注目されている。 我々はHIF-1活性化因子スクリーニング実験を行いUCHL1が新規HIF-1活性化因子と同定した(Goto et al. Nature Communications. 2015)。本研究ではがん細胞でUCHL1-HIF-1経路がグルコース代謝のリプログラミングにより抗酸化能を上昇させて放射線抵抗性を獲得することを明らかにし、UCHL1-HIF-1経路が放射線治療増感のための有望な治療標的であることを示した。 まず定量的な糖代謝産物解析を行い、UCHL1の過剰発現によりHIF-1を介してグルコース代謝経路を解糖系優位な状態にリプログラミングしていることを見出した。さらに、UCHL1を過剰発現させると、細胞内のNADPH、還元型グルタチオン量の上昇が認められた。この効果は、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼをサイレンシングすることにより有意に抑制されることを確認した。これらの結果より、UCHL1はペントースリン酸経路依存的に細胞内の還元型グルタチオン量を上昇させていることが示された。最後に、コロニー形成アッセイを実施して放射線感受性の評価を行ったところ、UCHL1の過剰発現によって放射線治療抵抗性が誘導され、さらに、UCHL1による放射線抵抗性はペントースリン酸経路の阻害剤である6ANで処理すると有意に抑制されることを確認した。 以上の研究成果はScientific Reports誌に投稿し採択、掲載された。
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Research Products
(3 results)