2019 Fiscal Year Annual Research Report
Biological and diagnostic research on optimal radiation dose for lung cancer screening with low dose CT
Project/Area Number |
17K16445
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
坂根 寛晃 広島大学, 病院(医), 医科診療医 (60781672)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 低線量CT / DNA損傷 / 染色体異常 / 放射線被ばく |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、予定していたすべての研究参加者のCT撮影および血液サンプルの収集を終え、CT撮影により引き起こされたDNA損傷の定量分析を完了した。研究結果は英文雑誌(Radiology)に掲載された。概要は下記の通りである。 低線量CTを用いた肺がん検診の有用性が示されているが、低線量CTの被ばくによる生物学的な影響はこれまで不明であった。我々は低線量CT検査の生物学的影響を検討するため、末梢血リンパ球に引き起こされるDNA損傷と染色体異常を定量解析した。209人の参加者が前向きに登録され、107人が低線量CT、102人が通常線量CTで撮影された。CT検査の直前と15分後に採血を行い、γ-H2AXの免疫染色によりDNA二本鎖切断数を、PNA-FISH法により染色体異常数を定量解析した。また、2群間の潜在的な特徴の違いの影響を除外するために、209人のうち63人は3ヶ月以内にもう一方の撮影を行い、撮影前後で採血を実施した。低線量CT群と通常線量CT群では、男女比、年齢、体格に有意な差は認められなかった。実効線量の平均値は、低線量CTが1.5mSv、通常線量CTが5.0mSvであった。統計解析の結果、通常線量CT後にDNA二本差切断と染色体異常はともに有意に増加したのに対し、低線量CT後には有意な増加は認められなかった。今回の研究では、低線量CT検査の人体への影響は現在検査可能なレベルでは検出できないほどに小さいことが示され、通常線量CT撮影と比較してその影響は小さいことが示唆された。また、近年の逐次近似画像再構成法などの被ばく低減技術を用いることで、画質を保ちながら胸部CTの実効線量を低下させることが可能であり、放射線学的な観点および生物学的な観点の両方から、胸部CT撮影の線量低減の目標は1.5mSvあたりに設定することが可能と思われた。
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