2017 Fiscal Year Research-status Report
放射線防護剤・抗がん剤開発を目指した新しい発がんメカニズムの解析
Project/Area Number |
17K16479
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
齋藤 陽平 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (10613698)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射線照射 / 突然変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線によるがん化リスク上昇の解析のため、培養細胞を用いた放射線照射による突然変異誘導について解析を行っている。放射線照射による突然変異は、DNA損傷後の修復ミスが主な原因と考えられているが、我々は放射線照射を繰り返した細胞のみならず、放射線照射の単回照射でも線量依存的にシチジンデアミナーゼであるAPOBEC3の発現が上昇することを見出した。そこで放射線照射誘導性の突然変異に対するAPOBEC3の関与を考え解析を行なった。APOBEC3は主にウイルスなどの一本鎖DNAのC>U変異により抗ウイルス作用を示すことが明らかにされてきたが、近年がん細胞におけるC>T変異パターンに寄与していることが数多く報告されている。本年度は複数のがん細胞で放射線照射後に発現が上昇し、がん細胞の突然変異にも関与していることが報告されているAPOBEC3Bに注目し、APOBEC3Bノックアウト(KO)細胞をCRISPR-Cas9のゲノム編集技術を用いて作成した。突然変異頻度は、HPRTアッセイを用いて測定した。APOBEC3B KO細胞は、自然突然変異率が著しく低下するだけではなく、放射線照射後の突然変異頻度の上昇も有意に抑制することが明らかとなった。APOBEC3B過剰発現細胞は、逆に自然突然変異を上昇させたが、放射線照射後の突然変異頻度の上昇に相乗的な作用はなかった。突然変異のパターンを解析するため、 HPRT遺伝子のエキソンをPCRで増幅させ、DNAシーケンスを行い突然変異のパターン解析を行なった。APOBEC3B KO細胞は、自然突然変異において点変異の頻度が顕著に抑制されたが、放射線照射後の欠失の増加も抑制することが明らかになった。解析の結果から、APOBEC3B KO細胞による突然変異頻度の抑制は、C>T変異の抑制だけでは説明できない。今後は、その作用機序解明を目的に解析を続けていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
APOBEC3Bによる放射線照射後の突然変異への関与が明らかとなり研究目的の一つは達成された。しかしながら、その詳細な作用機序に不明な部分があり、今後この点について詳細な解析を行うことが研究の発展につながると考えられた。またAPOBEC3B過剰発現細胞やAPOBEC3C KO細胞の作成と評価も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
作用機序解析のためのAPOBEC3B-GFP発現細胞の作成には成功したが、安定高発現株ではいくつかの問題が生じ、その改善のため、Tet on systemを用いた発現細胞の作成を行い、作用機序解析を中心に行う予定である。
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Causes of Carryover |
予定以上に計画が進んだ部分があったため、効率化のため、一部実験計画の順序の変更し計画の前倒しと次年度への先送りを行ったため。
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Research Products
(5 results)