2018 Fiscal Year Research-status Report
クローン増殖能維持及び回復促進に帰す標的因子を探索する
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17K16481
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
石川 純也 杏林大学, 保健学部, 助教 (70707215)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / クローン増殖能 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血幹細胞は生涯に渡り、全ての末梢血球を供給する。造血幹細胞への放射線影響は、これまで細胞死に注目されてきた。しかし、放射線障害からの回復において重要なのは造血組織を再建することであり、これは造血幹細胞のクローン増殖能なくしては達成できない。放射線によりクローン増殖能が失われる機構は明らかでなく、今日の被ばく医療を困難にしている。本研究では、造血幹細胞のクローン増殖能喪失の一因として想定される酸化―抗酸化(レドックス)バランス崩壊や細胞老化と、放射線量との関連性を明らかにし、クローン増殖能の維持及び回復促進の標的を特定することを目的とする。本研究の成果は、放射線ばく露個体の影響評価や障害発症機構の解明につながり、致死的な放射線ばく露個体に対する新規治療法開発への貢献が期待される。 平成30年度は、マウスへの全身照射後3時間、12時間、24時間における造血幹/前駆細胞の(1)生存率、(2)クローン増殖能、(3)細胞内活性酸素種量、(4)Nrf2発現量の変化、さらに(5)ミトコンドリア損傷頻度の変化について調査した。その結果、照射後12時間以内に生存率及びクローン増殖能は大幅に低下し、細胞内活性酸素種量と酸化ストレス応答因子であるNrf2の発現量が増加していた。一方、ミトコンドリア損傷頻度に顕著な変化がみられなかった。これらの結果は、放射線によるクローン増殖能喪失には活性酸素種と抗酸化機能が関与している可能性を示している。そこで平成31年度は、Nrf2とその標的遺伝子が放射線によるクローン増殖能維持に関与する候補因子であるか、ヒト細胞を用いて確かめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に実施を計画していた項目のうち、基盤となる照射後24時間以内のクローン増殖能と細胞内活性酸素種量との関連性、さらに抗酸化機能に関与する酸化ストレス応答因子であるNrf2発現変化、ミトコンドリア損傷頻度解析により、クローン増殖能喪失には抗酸化機能が関与していることを明らかにした。これらの検証は現在も進めており、これらの結果がでる平成31年度は研究の進展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、前年度の検討課題2「線量応答解析ならびにクローン増殖能と細胞老化やミトコンドリア機能との関連性解析」、特にクローン増殖能と細胞老化に関して継続して研究を推進すると共に、検討課題3「ヒト造血幹/前駆細胞での検証と応用への試み」に焦点を当て研究を進める。 平成31年度に検討する具体的な項目は次の3点である。 (1)前年度の成果を補足する照射1日以内におけるSenescence-associated beta-galactosidase、p19、p21等の細胞老化マーカーの発現解析 (2)ヒト正常細胞株およびヒト造血幹/前駆細胞(CD34+)への生体外照射による検証 (3)クローン増殖能喪失に決定的な因子の同定と応用への試み
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Causes of Carryover |
平成30年度使用額で概ね目標とする成果が得られたため次年度使用額が生じた。 これらは、平成31年度実施予定の研究における消耗品購入に充当する予定である。
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