2017 Fiscal Year Research-status Report
新規アミノ酸ATSMaaを利用した次世代Cu-64標識NET診断/治療薬の開発
Project/Area Number |
17K16491
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
藤澤 豊 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (30511993)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 新規アミノ酸ATSMaa / Cu-64標識NET診断/治療薬開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、診断~治療を同一化合物で行うことが可能な次世代神経内分泌腫瘍(NET)診断/治療薬の開発を最終目標とし、ATSMをCu chelatorに有する新規Cu-64標識somatostatin (SST)誘導体64Cu-ToDBTTATEを合成した。本化合物は、NETに高発現するSST受容体SSTR2に対し高親和性かつ選択的結合を示すこと、NETモデルマウスにおいて腫瘍に集積を示し、新規NET診断薬として有望な化合物と考えられた。しかしながら、64Cu-ToDBTTATEは、64Cu-DOTATATE (対照化合物)に比べ高い疎水性を有することから、腫瘍以外への組織に対しても残留しやすいことなどの問題点も同時に明らかとなり、より物性の優れた薬剤開発が必要と考えられた。現行化合物の分子デザインは、ペプチドN末端に、スペーサーを介してATSMを結合している。しかしながら、化合物の物性最適化を行うにあたり、スペーサー部位の構造修飾でしか対応することが出来ないため、新たな分子デザインが必要となった。 本研究では、これを可能とするツールとしてATSM構造を側鎖に有する新規アミノ酸ATSMaaを考案し、Cu chelatorを含むアミノ酸導入後、更なる分子修飾が可能な分子デザインを考案した。固相樹脂上に構築した保護ペプチドに対して、合成したFmoc保護ATSMaaを様々な縮合剤を用いてペプチドに導入することで、本アミノ酸導入における効率的な縮合剤を検証した。その結果、汎用的な縮合剤を用いた導入が可能であることを確認し、そのうちDMT-MMを用いた場合に最も高い導入率を得た。 次いで、ATSMaa導入ペプチドに対し、水溶性分子を更に導入し、新規SST誘導体を合成した。これら新規SST誘導体の物性を評価したところ、既存のSST誘導体に比べ物性が大きく改善することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度には、①新規アミノ酸ATSMaaの樹脂上に構築した側差保護ペプチドへの効率的な導入法の確立、②分子全体の物性調整に最適な水溶性分子によるペプチドの修飾、③新規ATSMaa導入SST誘導体の脂溶性評価、血清中安定性評価およびCu放出能の評価を予定していた。①Fmoc保護ATSMaaは、従来のFmocアミノ酸同様に汎用される縮合剤を用いてペプチドに対して縮合が可能なこと、②ATSMaa導入ペプチドに対して、そのN末端に容易に水溶性分子修飾が可能であることを明らかにした。 また、③新規ATSMaa導入SST誘導体は既存のSST誘導体に比べ水溶性が大きく向上されたこと、また既存のSST誘導体と同等の血清中安定性およびCu放出能を有することも明らかとなった。さらに、H30年度に予定している受容体結合親和性評価の一部も進めていることから、おおむね順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は、引き続き新規ATSMaa導入SST誘導体のSST受容体2よび関連受容体サブタイプに対する親和性評価を行い、新規化合物のSST受容体2への親和性を既存化合物と比較評価する。また、有望な化合物に関してCu-64による標識実験、モデルマウスにおける体内動態の評価およびPET撮像実験を行い、新規化合物のNET診断/治療薬としての有用性を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究で用いる新規アミノ酸ATSMaaは大量合成が必要であった。また、新規アミノ酸のペプチド鎖への導入難易度も不明であった。当初、これら種々の合成段階において合成収率が低下することを勘案し、合成用試薬および精製時の消耗品購入に余裕をもって予算計上していた。本アミノ酸は、合成スケールアップによる大きな収率低下を起こすことなく合成が可能であり、また保護ペプチドに対しても大きな効率低下を起こすことなく導入することが可能であった。さらに、水溶性分子修飾を行った最終目的物についても比較的容易に合成が可能であったことから、最低限の試薬および消耗品で本研究に必要な化合物量を合成することができた。 生じた次年度使用額に関しては、H30年度実施予定である研究の充実に割り当てる予定である。
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Research Products
(1 results)