2018 Fiscal Year Research-status Report
Wnt5a/ALCAM陽性乳癌に対する複合抗体療法を中心とした新規治療の開発
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17K16509
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
網岡 愛 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 専門研究員 (90727207)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Wnt5a / 乳癌 / ER陽性 / ALCAM / PI3K-AKT-mTOR経路 / PIK3CA遺伝子変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
Wnt5aは、Wntシグナル経路の一つであるβ-カテニン非依存性経路の代表的なリガンドであり、胃癌、前立腺癌や非小細胞肺癌においてはWnt5aの発現が悪性度や 細胞浸潤、転移と関連していることが報告されている。乳癌においては、我々の研究から、(1) Wnt5a発現と ER陽性とは強く相関し、(2) Wnt5a発現とリンパ節 転移、核グレード、リンパ管侵襲との間に有意な相関を認め、(3) Wnt5a陽性乳癌はWnt5a陰性乳癌よりも有意に無再発生存期間が短いということが明らかになった。 得られたこれらの結果から、エストロゲンシグナルとWnt5a発現との関係を予想した。Wnt5aを強制発現させたER陽性乳癌細胞株を用いて培養実験を行ったところ、1nMのエストロゲン刺激によりWnt5aの発現は増加し、0.5 μMのタモキシフェン投与によりWnt5aは再び減少した。しかし、内因性にWnt5aを発現しているER陽性乳癌細胞株を用いたエストロゲン刺激、タモキシフェン刺激では、明らかなWnt5a発現の増減は認めなかった。 一方、PIK3CA遺伝子変異をもつ ER陽性乳癌組織においてWnt5aの発現が増加しているという論文報告がある。その報告と上記結果を合わせると、エストロゲンシグナルとPI3K-AKT-mTOR経路の両方の関与により、Wnt5a発現が制御されているという可能性を考えた。その仮説を検証する目的でER陽性乳癌細胞株を用いた培養実験を行った。結果、試薬による一時的な短期間のER刺激、PI3K-AKT-mTOR経路刺激では、Wnt5a発現に変化がないという結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調にWnt5a陽性乳癌の性質、制御メカニズムを検証出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
PIK3CA遺伝子変異の有無と、Wnt5a発現の有無に相関があるのかを、乳癌手術検体からのFFPE標本を用いてRNA抽出を行い、リアルタイムPCRでWnt5aのmRNA量を確認する予定である。
また、細胞実験では、一時的ではなく、持続的にPI3K-AKT-mTOR経路のシグナルが亢進/減弱している条件で、Wnt5a発現の増減を確かめる予定である。
Wnt5aを制御するメカニズム(現時点ではERシグナルとPI3K―Akt―mTOR経路)が判明すれば、Wnt5aはホルモン陽性乳癌の新規治療ターゲットとして期待される。
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Causes of Carryover |
当該年度の学会出張として、予定ほどは出席しなかったこと、人件費・謝金も生じなかったたため、未使用額が生じた。次年度はこれらを引き続き学会出張費や物品費に活用していきたい。
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