2017 Fiscal Year Research-status Report
乳癌におけるリキッドバイオプシー法の開発と臨床応用への取り組み
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17K16511
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
竹下 卓志 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (60736289)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ER陽性乳癌 / 内分泌抵抗性 / Liquid biopsy / cell-free DNA / ESR1 mutation / PIK3CA mutation / biomarker |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、“ER陽性乳癌患者の血液検体および組織検体から抽出された遺伝子を用いて、内分泌療法耐性化にかかわる遺伝子異常をmultigene assayやdigital PCR法を使用し、治療効果予測および治療効果モニタリングとしてのctDNAの臨床的意義を解明する”であった。 我々は、ER陽性転移再発乳癌で内分泌療法耐性化にかかわる遺伝子異常として脚光を浴びているESR1変異およびPI3K/AKT 経路の異常活性化を引き起こすPIK3CA変異の臨床的意義を、以下の様に論文にまとめた。ER陽性乳癌86症例185血液検体を対象とした研究において、ESR1変異、または、PIK3CA変異陽性症例群では、全内分泌療法投与期間が有意に短かった。 治療経過中の遺伝子変異のモニタリングの意義を検討した研究では、治療経過中に64.2%の症例でESR1変異が陰性化し、それらの群は、ESR1変異陽性群より、全内分泌療法有効期間が有意に長かった。PIK3CA変異は、3例のみの陰性化であった (Oncotarget 2017)。 また、ER陽性乳癌患者128症例251血漿検体を対象とし、PIK3CAおよびESR1変異の臨床学的意義を治療ライン別に検討した研究において、治療ラインが進むにつれ、 PIK3CA変異およびESR1変異は23%から41.9%と頻度が増加した。さらに治療早期群と治療後期群に分け、後治療の治療成功期間(TTF)を検証した結果、治療早期群では、PIK3CA変異陽性症例は、TTFが有意に短縮し、治療後期群では、ESR1変異陽性症例は、TTFが有意に短縮した。AKT1変異は、初発、再発を通じて低発現であったため、その予後への影響は不明であった (Molecular Cancer 2018)。 本研究は、上記変異の計測が治療戦略上重要な意義がある可能性を示した重要な研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
治療内容が明らかとなっているER陽性再発乳癌患者の連続的に採取された血液検体から抽出された遺伝子を用いて、内分泌療法耐性化にかかわるESR1変異およびPIK3CA変異が、治療効果予測および治療効果モニタリングツールとして臨床的に重要であることを明らかにし、【研究実績の概要】で示したように、論文化することができた。また上記テーマを検証するにあたって、cfDNA中の核遺伝子変異は、治療薬や癌の進行具合によってその動態が異なるため、組織内とcfDNA中の遺伝子変異は必ずしも一致しないことや(Translational Oncology 2017)、ESR1変異の1つであるE380Qの頻度は日本人ではrareであることを明らかにし、論文化することができた(BMC Cancer 2017)。
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Strategy for Future Research Activity |
科研費申請時、内分泌療法耐性化に関わる遺伝子の有用性を前向きにかつ連続的に収集された検体で検証し、効果的な内分泌療法を行うための治療効果予測およびモニタリングツールを開発することを謳ったが、先日、第Ⅲ相無作為化試験においてそれが検証され、論文発表された (Nature Communications 2018)。恐らくその他のphase III試験でも取り組まれ始めており、このまま少ない症例で検証してもimpactは少ないものと思われる。代替案として、組織とマッチした血液検体を用いて、まだ検証されていない標的遺伝子のamplificationの臨床学的意義を追求することとした。また標的遺伝子のamplificationとmutationの関係も不明であり、それらがどう内分泌耐性化に関わっていくかを明らかにすることは、先に示した計画以上に臨床学的意義を有する可能性がある。
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