2017 Fiscal Year Research-status Report
肥満外科手術後の腸内・口腔内細菌叢の変化と肥満関連健康障害の改善機序の解明
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17K16513
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
馬場 誠朗 岩手医科大学, 医学部, 助教 (90573064)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高度肥満症 / 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術 / 腸内細菌叢 / 口腔内細菌叢 / ヘパトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国における肥満の定義は体格指数(BMI)が25kg/m2以上とされており、平成26年国民健康・栄養調査によると推定で100万人の肥満外科手術の対象者が存在することになる。アジア人は欧米人に比べ高度肥満の頻度は少ないが、低い肥満度で肥満随伴健康障害が発生する割合が高いと報告されている。我々は、2008年6月から高度肥満症に対して腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(LSG)を施行し、良好な減量成績と肥満関連健康障害の改善を報告している。2014年4月よりBMI≧35kg/m2で肥満関連健康障害を有する内科治療抵抗性の高度肥満患者に対して保険収載されたLSGは、他の肥満外科手術に比較し、合併症の発現頻度が低く、また、高率な胃癌発生率を考慮すると術後においても胃内観察が可能であることからも日本人に適した術式である。 近年、腸内細菌叢は心疾患や炎症性腸疾患との関連性が明らかになり、肥満、糖尿病、動脈硬化などといったさまざまな病態への関与が示唆されてきている。肥満マウスでは、腸内細菌叢の多様性が減少していることが明らかになっているなど、肥満と腸内細菌叢との間に少なくとも食餌による影響を介さない何らかの直接の関連があることが示されている。 日本人の高度肥満症者に対するLSGは胃バイパス術と同様の治療効果が得られており、胃バイパス処置マウス同様に術後腸内細菌叢の変化が生じ、術後減量効果や2型糖尿病寛解への影響を与えていることが予想される。腸内細菌叢の術後変化の解析と、その結果を口腔内細菌叢の変化と比較することは重要であり、口腔内細菌叢の変化が高度肥満症の改善メカニズムの解明に新たな知見を加える可能性があると考えている。また、術後の胆汁酸の組成変化と、肥満関連疾患の発症因子と考えられている肝臓由来の分泌タンパク質であるヘパトカインの変化について、術後肝容積の変化との関連性についても解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年は12例の術前データを採取している。本研究の結果は、術後の定点ポイントのデータが必要となり、継続的に各症例のデータを蓄積している状態である。 情報収集は必要不可欠でるため、学会や研究会に参加し肥満外科手術のデータを発表するとともに、他の肥満外科治療施設からの新知見取得も積極的に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年に施行したLSG症例のデータ集積を継続するとともに、新規手術症例も追加検討する。 研究内容は、1)次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析による腸内・口腔内細菌叢の変化、2)糞便中の胆汁酸分析、有機酸分析、短鎖脂肪酸分析、pH測定及びエネルギー量の測定、3)肥満T2DM患者の糖代謝改善機序の解明と口腔内と腸内の細菌叢変化の関連性の検討、4)腹部CTによる内臓脂肪量と肝容積の測定、5)ヘパトカインの測定、である。 平成30年度には研究結果を解析し、海外学会発表及び英文論文において成果を発表する。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、胆汁酸分析、有機酸分析、短鎖脂肪酸分析、pH測定及びエネルギー量の測定検体を蓄積し、解析を平成30年度に予定とした。 平成30年度は、上記解析と、腸内・口腔内細菌叢の次世代シークエンサーを用いたメタゲノム解析用試薬及びヘパトカインの測定用試薬の購入に経費を使用する予定である。
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