2018 Fiscal Year Research-status Report
補体第3因子阻害による凝固・補体系抑制を介した肝細胞移植後早期炎症反応の制御
Project/Area Number |
17K16525
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中西 渉 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (50636024)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 肝細胞移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞移植は肝不全に対する治療法である。現在一般に行われている肝移植とは異なり、肝臓から肝細胞を分離し、門脈内に移植することによって肝機能の改善を目的とする。現在の問題点の一つとして、門脈内移植の低い生着率があるが、これは移植直後分離肝細胞が本来触れることのない血液と直接接触することから誘発される、凝固補体系の活性化によって移植した分離肝細胞が破壊されてしまう現象に要因の一つがある。本研究の目的はこの移植直後の凝固補体系活性化反応を補体系を制御することによって移植成績の向上を目的としている。これまで検証の土台となるラットモデルを用いた肝細胞移植モデルの構築を行ってきた。肝臓でアルブミンを産生できない無アルブミンラットをレシピエントとして、正常なラットから分離したアルブミンを産生できる肝細胞を移植し、移植後血中のアルブミンを測定することによって移植成績を判断するモデルである。現在までにこのモデルの手技・操作が安定したため、このモデルに補体系をコントロールするための薬剤を投与していく。補体系はいくつかの因子がカスケードとして反応し活性化が進展していくが、カスケードの段階を担っているC3aおよびC5aをターゲットとして、C3a抗体およびC5a阻害剤を用いる。抗体または薬剤を幹細胞移植直前のレシピエントラットに経静脈内に投与し、移植成績への影響を検討する。評価としては短期的および長期的な移植成績への効果を検証する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝細胞の分離工程は複雑かつ繊細なため、手技が安定し収量が確実に得られるようになるまで修練を要した。またラットを全身麻酔下に開腹し、門脈内にカニュレーションし、出血させないように移植するのも繊細な手技であるため、やはり安定するまでに時間を要した。また無アルブミンラットは繁殖させる必要があったため、実験をすすめるにあたっての律速段階になることもあった。以上の理由で移植手技成績を安定させるには時間を要した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで構築したラットの肝細胞移植モデルをもと検証していく。補体系の中で重要な役割を担うC3aに対する抗体とc5a阻害剤を投与して補体系を抑制し、移植直後および長期の成績にどのような影響がみられるかを検証していく。移植直後の評価としては血清アルブミン値を測定して移植肝細胞の機能を評価し、また凝固系と補体系は相互作用を有していることから、薬剤の制御効果をみるために凝固系の評価項目であるトロンビンアンチトロンビン複合体を測定する。長期的には血清アルブミンの推移とレシピエント肝臓の免疫染色を行い、生着率を確認する。
|
Causes of Carryover |
c3a抗体およびc5a阻害剤が高価であるため、今後購入し使用していくと費用が嵩むと予想され、次年度はこれまでよりは高額になると予想される。
|