2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K16528
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大原 佑介 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90757791)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 糖鎖 / レクチン / 腹膜播種 / 癌幹細胞 / ドラッグデリバリー / 薬剤担体 / トキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は大腸癌腹膜播種の研究に先立ち、膵癌に対する糖鎖標的レクチン治療の開発を進行させた。膵癌幹細胞の糖鎖発現解析の結果、膵癌細胞には特異的なフコシル化糖鎖(H-type1/3/4)が発現していることを同定し、更にその糖鎖構造に特異的に反応するrBC2レクチンを同定した(特許申請済)。さらに、膵臓がんの手術検体を使用し、約70検体の臨床膵癌の切片へのrBC2の反応性を免疫組織学的に確認した。すなわち、膵癌上のフコシル化糖鎖(H-type1/3/4)を標的とする、rBC2レクチンを薬剤キャリアとして利用する新規治療法が十分可能であるというエビデンスを得た。 本年度は、in vivoでのrBC2-PE38の抗腫瘍効果、毒性について検討した。膵癌細胞株をマウス皮下に移植した Cell Xenograft モデルで局所投与により、投与量依存的な抗腫瘍効果を認めた。また、腹腔内に膵癌細胞株を播種させた腹膜播種モデルを作成し、rBC2-PE38を腹腔投与した所、有意に播種個数を減少し、生存も優位に改善した。さらに、rBC2-PE38の経静脈的に血中投与したモデルにおいても、マウスの生存を有意に改善することに成功した(生食群 MST:62日、腹腔投与群: 105 日 (P < 0.0001)、血中投与群:90 日(P < 0.0001))。 一方で大腸癌に関しては、臨床の原発巣、転移巣(肝転移・腹膜播種)の手術検体を当施設のバイオバンクにホルマリン未固定の状態で凍結保存する事を進めた。原発性大腸癌だけで100例以上の検体がストックされており、大腸癌の実験系にすぐに応用可能な状態に準備した。また大腸癌の転移増殖に深く関わる癌幹細胞マーカーであるCD133の免疫組織学的染色法を手術ホルマリン検体において確立し、臨床検体での発現を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は膵癌の糖鎖発現解析の結果、特異的な糖鎖発現を同定し、その糖鎖構造に特異的に反応するレクチンを同定しえた。さらもマウス皮下に移植するcell xenograftモデル、腹膜播種モデルを安定的に作成し、抗腫瘍効果を局所注射、静脈注射双方において確認した。さらにレクチンは血液凝集活性が懸念されるが、本レクチン単独ではヒト赤血球 において血液凝集活性がないことも確認し、マウスに安全に投与する事が出来た。このように先行している膵癌細胞での実験系を確立し、本研究の有用性を実証しつつある。また大腸癌細胞で検証が出来るように臨床検体などの準備を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは大腸癌細胞株においてフコシル化糖鎖(H-type1/3/4)が発現していることを確認し、更にその糖鎖構造にrBC2レクチンが特異的に反応するかどうかを検討する。大腸癌と膵癌は共に腺癌であり、癌幹細胞マーカーも共通な抗原が多いことから、rBC2レクチンが同様に発現、反応することが予想される。次に膵癌実験と同様に大腸癌細胞株および手術検体を用いたxenograftを用いてrBC2-PE38の抗腫瘍効果を検討する。膵癌では検証しなかった手術検体を直接マウス腹腔内に播種させることで、臨床応用に向けて一段高いエビデンスを構築することができると考える。さらに既存の癌幹細胞マーカーとの糖鎖の関連を免疫染色を用いて見出し、糖鎖標的治療が癌幹細胞を標的としうるかを検討したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由 動物実験に使用するヌードマウスが想定された頭数に達しなかったため。 使用計画 大腸癌細胞株ならびに手術検体を用いたXenograftが100-200匹単位で必要であり、初年度より費用が必要となる。また使用試薬の増加が予想される。
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