2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K16530
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高根 希世子 東京大学, 医科学研究所, 助教 (60756112)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 家族性大腸腺腫症 / 大腸がん / 大腸腺腫 / エピジェネティクス / メチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌全体の約10%には遺伝性大腸癌が存在し、若年発症傾向や多発性および他臓器への発癌を高頻度で合併する高リスク悪性腫瘍群であるが、散発性大腸癌との相違点が解明されておらず、散発性大腸癌と同様に扱うべきか、個別に扱うべきか、対応に因循する問題点がある。特徴的なポリープ像から家族性大腸腺腫症(FAP)は比較的診断されやすいが、臨床的特徴に乏しいLynch症候群には多くが見逃されがちである。遺伝子診断的には、FAPの原因はAPC変異が主である一方で、Lynch症候群には、ミスマッチ修復遺伝子(MLH1、MSH2、PMS2など)の欠損だけでなく、増殖因子受容体(TGFBR2およびIGF2R)やアポトーシスに関連する遺伝子(BAX)、DNA修復遺伝子(MSH3およびMSH6)等の体細胞変異の既報が見られるが、診断決定性が乏しい上、両癌種には例外的な症例も少なくない。遺伝性大腸癌はリスク対策だけでなく、最適な治療提供、新規治療開発の大前提となる症例の層別化と各群の発癌分子基盤の解明がいまだに非常に不十分であるといえる。 本研究は遺伝性大腸癌を網羅的解析により層別化、発癌分子機序を解明することを目的とし以下の研究を進める。遺伝性大腸腫瘍の臨床検体350-400検体を用い、複数の医療施設と連携の下研究を進める。正常粘膜、腫瘍病変の凍結標本およびホルマリン固定標本より核酸を抽出し、パイロシークエンス、Infinium450Kビーズアレイ法を行い、階層的クラスタリングによりメチル化網羅的解析を行う。さらにエクソン変異解析によって胚細胞性変異遺伝子の有無を中心に、抽出された遺伝子群の中から機能解析によりドライバー遺伝子候補を絞り込む。それら候補遺伝子に対してはノックダウン、強制発現を行い、癌進展の原因と関連する新たな治療標的となるドライバー遺伝子を同定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
協力機関との連携のもと、検体採取は滞りなく進んでいる。家族性大腸腺腫症の腫瘍、正常粘膜、前がん病変に対し、レーザーマイクロダイセクションを施行し、正確に検体を収集した。収集した検体よりゲノムDNAを回収し、バイサルファイトC-T変換を施す。それらサンプルの中で、DNAのクオリティが高く、特徴的な変異遺伝子や環境因子の存在するものについて、Infinium450Kビーズアレイ法を用いて網羅的DNAメチル化解析を進めた。その結果、家族性大腸腺腫症について、少なくとも2つのサブクラスが存在し、そのうちの1つは正常粘膜に限りなく近いメチル化レベルを持つことが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、検体収集、特異的なメチル化マーカーの検索、ゲノム変異解析等を行う。 A)臨床検体準備:家族性大腸腺腫症に関して曖昧なサブタイプを明瞭にするため、さらに10症例以上100検体以上の検体を準備する。 B)網羅的DNAメチル化解析:引き続きInfinium450Kビーズアレイを用いてDNAメチル化情報について網羅的解析を行う。 C)ゲノム変異解析:ゲノム変異解析においては、FAP検体に対して胚細胞性変異遺伝子だけでなく、体細胞変異として、APC・MYHなどドライバー遺伝子候補のエクソン変異解析を行う。抽出された遺伝子群に対しては、GSEA解析やpathway解析を進め、ドライバー遺伝子候補を絞り込む。 D)機能解析:ゲノム変異解析を通して絞り込んだドライバー候補遺伝子に対し、近似したサブタイプに属する大腸癌細胞株を用いてshRNAによるノックダウンを行う。一方、異なったサブタイプの大腸癌細胞株および正常細胞株に対しては遺伝子強制発現を行い、遺伝性大腸癌の特徴を取捨するかを検討する。遺伝性大腸癌の特徴を得た系に対しては、有効なカウンター薬剤の探索も進める。
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Causes of Carryover |
平成30年2月1日に千葉大学から東京大学へ異動となったため。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Impact of combinatorial dysfunctions of Tet2 and Ezh2 on the epigenome in the pathogenesis of myelodysplastic syndrome2017
Author(s)
Hasegawa N, Oshima M, Sashida G, Matsui H, Koide S, Saraya A, Wang C, Muto T, Takane K, Kaneda A, Shimoda K, Nakaseko C, Yokote K, Iwama A.
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Journal Title
Leukemia
Volume: 31
Pages: 861-871
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Frequent promoter hypermethylation associated with human papillomavirus infection in pharyngeal cancer2017
Author(s)
Nakagawa T, Matsusaka K, Misawa K, Ota S, Takane K, Fukuyo M, Rahmutulla B, Shinohara KI, Kunii N, Sakurai D, Hanazawa T, Matsubara H, Nakatani Y, Okamoto Y, Kaneda A.
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Journal Title
Cancer Letter
Volume: 497
Pages: 21-31
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Two subtypes with distinct molecular features in colorectal tumor of familial adenomatous polyposis2017
Author(s)
Kiyoko Takane, Keisuke Matsusaka, Satoshi Ota, Masaki Fukuyo, Yao Yue, Motoi Nishimura, Eiji Sakai, Kazuyuki Matsushita, Hideaki Miyauchi, Hiroyuki Aburatani, Yukio Nakatani, Tadatoshi Takayama, Hisahiro Matsubara, Kiwamu Akagi, Atsushi Kaneda
Organizer
第76回日本学会学術総会
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[Presentation] Correlation between gene promoter hypermethylation and prognosis in pharyngeal cancer2017
Author(s)
Takuya Nakagawa, Keisuke Matsusaka, Kiyoshi Misawa, Kiyoko Takane, Masaki Fukuyo, Satoshi Ota, Bahityar Rahmutulla, Naoki Kunii, Daiju Sakurai, Toyoyuki Hanazawa, Yukio Nakatani, Yoshitaka Okamoto, Atsushi Kaneda
Organizer
第76回日本学会学術総会
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[Presentation] Two subtypes with distinct molecular features in colorectal tumor of familial adenomatous polyposis2017
Author(s)
Kiyoko Takane, Keisuke Matsusaka, Satoshi Ota, Masaki Fukuyo, Yao Yue, Motoi Nishimura, Eiji Sakai, Kazuyuki Matsushita, Hideaki Miyauchi, Hiroyuki Aburatani, Yukio Nakatani, Tadatoshi Takayama, Hisahiro Matsubara, Kiwamu Akagi, Atsushi Kaneda
Organizer
第28回日本消化器癌発生学会総会
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