2017 Fiscal Year Research-status Report
GNG4 およびASGR2 を標的とした胃癌肝転移特異的な治療・診断法の開発
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17K16538
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 晴祥 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (80793504)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 胃癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
胃癌肝転移は極めて予後不良であり、この病態の理解を深め克服するためには新規胃癌肝転移関連分子の同定が必要である。我々は肝転移を有する胃癌症例から得た組織を対象にしたTranscriptome解析により、肝転移例で著明な発現亢進を認める遺伝子としてシグナル伝達因子である Guanine Nucleotide Binding Protein, Gamma 4 (GNG4) と膜輸送蛋白のひとつである Asialoglycoprotein Receptor 2 (ASGR2)を抽出した。本研究では、GNG4およびASGR2の胃癌細胞における機能、肝転移形成能への関与、発現度の臨床的意義を解析することを目的としている。平成29年度は、胃癌細胞株であるMKN1に対してCRISPR/Cas9 protein 法 によるゲノム編集を行い、シングルセルクローニングを経てGNG4ノックアウト(KO)細胞株を樹立した。KO効果は、western blotting 法にて確認した。GNG4-KO細胞株と親株の間で増殖能、浸潤能、遊走能、接着能を比較したところ、KO株では親株に比較していずれも有意に低下していた。Annexin V 染色では、GNG4-KO株は親株に比較して前期アポトーシス細胞が増加していた。GNG4-KO株ではミトコンドリア膜電位の脱分極が観察されるとともにCaspase 3および9の活性が亢進しており、ミトコンドリアに関連したアポトーシス経路が活性化していることが判明した。次年度に備えてNOD-SCIDマウスの門脈内にヒト胃癌細胞株を注入することでマウス肝転移モデルを作成し、その至適条件を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画は、in vitro実験およびマウスモデルの確立において、ほぼ遂行できた。ASGR2の機能解析については次年度に順次、行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ASGR2はKO株が樹立困難であったため、代替方法としてsiRNA法によるノックダウンによって機能解析を行っていく。GNG4同様に、ASGR2のノックダウンによる胃癌細胞増殖能、浸潤能、遊走能、接着能の変化を観察する。12種の胃癌細胞株に対して、84のEMT 関連分子、細胞増殖およびアポトーシスに関与する主要な pathway 関連遺伝子の発現をPCR array で網羅的に定量し、GNG4・ASGR2 発現レベルとの相関を解析する。GNG4に関しては親株およびKO細胞株について、western blotting 法によるpathway解析を行い、下流分子の探索を行う。さらに、GNG4-KO株を用いて5-FU感受性へのGNG4阻害の影響を検討する。平成29年度に確立したマウス肝転移モデルを用いて、in vivoでのGNG4の腫瘍形成能への影響を評価する。マウス肝転移モデルに対して、肝転移巣形成能(数、大きさ)および生存期間について、親株、GNG4-KO株の2群間で比較する。GNG4・ASGR2発現の臨床的意義を検証すべく、当教室で胃切除術を施行した症例から得た癌部および非癌部組織中のGNG4・ASGR2 mRNA発現度を定量的PCR法で定量する。GNG4・ASGR2発現度と、再発形式や予後を含めた各種臨床病理学的因子との相関を検討する。
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Causes of Carryover |
ASGR2ノックダウン効果が想定よりも順調に条件設定することができ、ASGR2の機能解析を行うために予定していた予算が一部未使用となったため、次年度に同目的のために使用する。
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