2017 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム不安定性とEGFR発現解析に基づいた胃癌の新しい治療戦略
Project/Area Number |
17K16560
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津田 康雄 九州大学, 医学研究院, 臨床助教 (90747354)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロサテライト不安定性 / 胃癌 / EGFR |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロサテライト不安定性(MSI)は発癌メカニズムの一つと考えられており、大腸癌、胃癌でも報告されている。一方EGFRは胃癌における高発現は予後不良とされている。近年MSI胃癌ではMSS胃癌よりもEGFR高発現症例が多いと報告されているが、その臨床病理学的特徴、治療戦略はまだ明らかになっていない。本研究では、MSI胃癌におけるEGFR高発現に着目し。そのメカニズムを明らかにすることで、新たな治療戦略を開発することを目的としている。 まず昨年度の研究計画であるMSI胃癌とEGFR発現の関係を明らかにするために、MSIの解析を行い、その結果1994年~2013年に胃切除を施行した284人の患者のうち26人(9.2%)の患者がMSI-Hと診断された。さらに胃癌切除標本でのEGFR発現解析を免疫組織化学染色法で評価した結果、MSI胃癌ではEGFR高発現症例が、MSS胃癌におけるそれよりも多いことが明らかとなった。 次に、近年MSI大腸癌ではEGFRの3’-非翻訳領域(UTR)におけるpolyA(13塩基)リピートの欠損がEGFRの過剰発現に関わると報告されており、バイオマーカー候補として注目されている。これによると、MSI癌部ではEGFR 3’-UTRのA13リピートで1~2塩基の欠損が多く生じており、A11,A12を含むmRNAはA13を含むmRNAよりも安定していることが報告されているが、胃癌におけるタンパク質レベルでのEGFR過剰発現との相関は未だに示されていないため、本研究では、上記で検討したMSI胃癌症例26例の癌部、非癌部のDNAを抽出し、EGFR 3’-UTR A13リピートを含むゲノム配列をダイレクトシークエンス法にて検討し、A13リピートの塩基欠損とEGFR過剰発現の関係を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究計画である、1.マイクロサテライト不安定性(MSI)の解析、2.胃癌切除標本でのEGFR発現解析、3.MSI胃癌でのPoly Aリピート配列のダイレクトシークエンスによる欠損の検証、4.A13リピート欠損とEGFR過剰発現の関係性の検討を当初の予定通り完了させている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究計画では、胃癌細胞株のおけるA13リピート欠損と抗EGFR阻害剤感受性に関する検討が目標である。胃癌細胞株で上述のA13リピートの欠損状況と、EGFRのmRNAレベル、タンパク発現をそれぞれPCR法、ウェスタンブロット等で検討する。さらにMSSかつEGFR陽性細胞株と、MSIかつA13リピート欠損をもつEGFR陽性細胞株に対して抗EGFR抗体を培地に添加、培養し、増殖阻害の影響を調べる。 課題としては当科で所有する胃癌細胞株が少ないため、新規に購入する可能性があるが、できればMSI胃癌細胞株とMSS胃癌細胞株それぞれを入手したいため、Cellbankのデータベースで十分に細胞株の背景を検証したうえで購入する。
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