2017 Fiscal Year Research-status Report
肝内微小環境による膵癌細胞のセレクション機構解明と微小環境ストレスの制御
Project/Area Number |
17K16567
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀岡 宏平 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10783699)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膵癌肝転移 / 循環癌細胞 / 腫瘍微小環境 / 好中球細胞外トラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、膵癌において肝転移が成立する際に作動する循環癌細胞の選択機構の解明と、肝内微小環境におけるセレクション機構を利用した肝転移制御、新規治療法の開発である。まず、In VivoにおいてマウスにGFPを導入した膵癌細胞を脾注して肝転移・肺転移モデルを作成し、癌細胞のトラップから微小転移の形成まで時間ごとに解剖して経時的変化を観察した。肝微小転移巣では肺に比べて有意にα-SMA陽性癌関連線維芽細胞が多く誘導されており、肝微小転移巣では辺縁に好中球浸潤も認めた。好中球は好中球細胞外トラップ(NETs)を来すと、肺線維化を促進することが知られているが、膵癌自然発生マウスのKPCL(LSL-Kras G12D/+ ;LSL-Trp53 R172H/+; LSL-Luciferase;Pdx-1 -Cre)マウス、および肝転移モデルマウスにNETs阻害薬であるDNaseⅠを投与するとコントロール群に比べて有意に肝転移が抑制された。微小肝転移巣の病理学的検討ではDNaseⅠ投与群ではGFP陽性癌細胞の数、α-SMA/GFPの面積比、α-SMA陽性病変の割合、いずれもコントロールに比べて低下していた。また、In Vitroの検討でマウスから濃度勾配遠心法や磁気ビーズを用いて分離採取した好中球を膵癌自然発生マウスから樹立した癌細胞と共培養すると、好中球のNETs形成促進作用が見られた。微小肝転移の成立に微小環境中の好中球が関与しており、好中球は癌細胞によってNETsを来してα-SMA陽性の癌関連線維芽細胞を誘導することで、肝転移の形成を促進している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝内微小環境における癌細胞の生存、接着に好中球によるNETs形成が重要な役割を果たしている可能性を明らかにし、さらにNETsによる癌関連線維芽細胞の誘導が肝転移の成立を促進している可能性があることが分かった。一方で循環癌細胞が肝内に捕捉される際にどのようなセレクション機構が働いているか、どのような物理的ストレス、変形を来しているかについてはまだ明らかになっておらず、今後の検討課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
癌細胞の脾臓内注入による肝転移モデルの観察から癌細胞の形態、経時的変化、生存細胞の特徴など、癌細胞側の因子について解析を進め、In Vitroでの再現に努める。再現可能できた場合には変形ストレスを受けた癌細胞の機能、形態的特徴の解析を進める。うまくいかない場合には膵癌オルガノイドを作成し、オルガノイドに対する細胞集団レベルでの外圧が癌細胞の特徴にどのような影響を与えるか検討する。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に進展しており、研究資金を有効に使用できたため。 次年度は研究用試薬、器材、抗体などの消耗品に使用する予定である。
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