2017 Fiscal Year Research-status Report
The mechanisms of acquiring chemo-resistance and identification of therapeutic targets in colorectal cancer stem cells.
Project/Area Number |
17K16571
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
泉 大輔 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (60594877)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 / c-Myc / FBXW7 / LGR5 / 抗癌剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌幹細胞は、自己複製能と多分化能によって階層性を持った腫瘍を形成する能力を持ち、治療抵抗性や腫瘍進展に関与する治療ターゲットとして提唱されてきた。固形癌において抗がん剤に対するアポトーシス抵抗性のメカニズムは不明な点が多い。大腸癌においては、様々な分子標的薬が実用化されているが、抗がん剤抵抗性に関わる分子を治療標的とした薬剤は未だ開発されておらず、そのメカニズムを解明することで新たな治療戦略につながる可能性がある。本研究の目的は、大腸癌幹細胞における抗がん剤抵抗性獲得の分子メカニズムを解明し、新たな治療標的因子を同定することである。我々は共同研究によって中外製薬研究所が樹立したLGR5陽性大腸癌幹細胞株(PLR123)の供与を受けた。PLR123は大腸癌幹細胞マーカーを高発現し、高い腫瘍形成能と自己複製能を有している。抗がん剤の投与によって、増殖を停止することで抗がん剤抵抗性を示し、同時にLGR5が陰性化するという特徴を有している。抗がん剤を除いて再度培養を行うとLGR5は陽性化し再度増殖を開始する。PLR123をマウスの皮下に移植したところ、非常に高い腫瘍形成能を持つことが分かった。さらにその他の大腸癌細胞株の移植によって形成した腫瘍と病理組織を比較したところ、PLR123では高度に分化した腺管構造を構築しており、癌幹細胞の重要な特徴の一つである多分化能を持った細胞株であることが確認できた。大腸癌幹細胞株PLR123において抗がん剤投与後のc-Myb及びc-Mycの発現を確認したところc-Mybでは発現に変化は見られず、c-Mycの低下が見られた。この現象はその他の大腸癌細胞株では確認できなかった。大腸癌幹細胞におけるc-Myc発現低下を介した治療抵抗性のメカニズムについて詳細を明らかにし、治療標的の創出につなげることを目的に研究を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸癌幹細胞株において、抗がん剤投与後に発現が低下したc-Mycを制御する上流の因子としてFBXW7に着目した。FBXW7はイマチニブを投与された白血病幹細胞において細胞をG0期に導入し抗癌剤耐性を獲得するメカニズムに寄与していると報告されている。抗癌剤投与後にc-Mycが低下した細胞において、FBXW7の発現は上昇していた。そこでFBXW7を抗癌剤投与後のPLR123細胞でsiRNAを用いてノックダウンしたところ、抗癌剤耐性が改善するという結果が得られた。一方で通常の大腸癌細胞株においては、抗癌剤投与後にFBXW7の上昇は見られなかった。続いて癌幹細胞株であるPLR123をマトリゲルにて処理することにより分化を誘導することに成功した。分化誘導したPLR123ではxenograftにおける腫瘍形成能が低下していた。分化誘導されたPLR123では抗癌剤投与後にFBXW7の上昇は見られず、また抗癌剤に対する耐性が低下していた。
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Strategy for Future Research Activity |
LGR5陽性/陰性/分化誘導大腸癌幹細胞株を用いてマイクロRNAアレイを行い、幹細胞性の維持に関わる因子とFBXW7との関連を解析し、in vitro, in vivoにて機能解析を行う。熊本大学大学院消化器外科学では各種消化器癌の手術を行っており、臨床検体は豊富である。また切除組織は凍結及びパラフィン包埋にて保存され、抽出核酸、臨床データは系統的に管理されている。平成17年より保存されている600例以上の大腸癌切除検体及び100例以上の大腸癌肝転移巣切除検体を用いて候補分子の免疫染色、RT-qPCRによる発現解析を行い、蓄積された治療成績、予後データとの相関解析にて基礎的知見の臨床的意義を検証する。大腸癌手術検体の中には術前に化学療法が行われた症例が100例以上あり、治療前の生検組織との発現の変化や、抗がん剤治療前後の発現と治療効果との比較を行い、候補分子を多角的に検証することができる。特に治療効果との比較検討を行うことで、治療前生検組織を使った治療効果予測に関する前向き試験につなげることができる可能性があり、癌幹細胞による抗がん剤耐性獲得機序をターゲットにしたテーラーメイドの分子標的治療の創出が期待できる。
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Causes of Carryover |
研究費は試薬及び器機などの消耗品購入費に充てる他、研究成果発表、情報収集にかかる旅費に充てたいと考える。 また、実験データの集約、管理、資料整理等を行ってもらう事務補佐員の雇用経費に充てたいと考える。
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