2017 Fiscal Year Research-status Report
アクアポリン5発現解析に基づく新たな膵癌低浸透圧腹腔内パクリタキセル療法の開発
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17K16576
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
小菅 敏幸 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (00457946)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 癌 / アクアポリン5 / パクリタキセル / 低浸透圧刺激 / 低温刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はすでに胃癌細胞株(MKN45)において、低浸透圧刺激によりパクリタキセル(PTX)の細胞内取り込みが著明に亢進することを確認しており、まず胃癌細胞株を用いた実験を行った。MKN45細胞を低浸透圧刺激下に蛍光標識されたPTX(Oregon green 488 PTX)で処理したところ、等浸透圧環境と比較し、細胞容積増大とともに細胞内PTX取り込みが亢進することを確認した。一方、低浸透圧刺激によって、PTX取り込み(OATP1B3)や排出(MDR1)に関与する膜輸送体の発現レベル(mRNA)や機能活性(OATP1B1/3の阻害剤であるRifampicinを使用して検討)に変化が見られないことを確認した。我々はまた、ウエスタンブロット法により胃癌細胞株(MKN45、NUGC-4)におけるアクアポリン5(AQP5)蛋白発現を確認した。さらに、NUGC-4細胞に低温刺激(24度)を加えると、37度環境と比較してAQP5蛋白発現レベルが上昇し、低浸透圧刺激時に生じる調節性細胞容積減少(Regulatory volume decrease:RVD)が抑制されることを確認した。また、NUGC-4細胞にAQP5発現ベクターをトランスフェクションしてAQP5を過剰発現させたところ、低浸透圧刺激時の細胞容積増大が亢進することを確認した。一方、MKN45細胞において、低浸透圧刺激時にクロライドチャネルブロッカーであるNPPBを併用した際にも、RVD抑制が生じるとともにPTXの細胞内取り込みが増強することを確認した。以上の結果から、低浸透圧刺激による細胞内PTX取り込み亢進においては細胞容積変化が重要であり、“RVD制御を介した癌細胞パクリタキセル取り込み増強効果”という新たな分子生物学的・生理解剖学的メカニズムを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胃癌細胞株を用いた実験ではあるものの、当初の研究計画のとおり、癌細胞株におけるAQP5発現レベルの解析、低浸透圧刺激による細胞内PTX取り込み・細胞容積変化の反応性の解析を終了している。すでに、次年度に計画していたAQP5発現制御系を用いた研究も進行中であり、研究計画は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の研究計画のとおり、胃癌・膵癌細胞株において、AQP5阻害薬・AQP5発現制御系を用いた低浸透圧刺激下での細胞内PTX取り込み・細胞容積変化・殺細胞効果の反応性の解析を進めていく。さらに、マウス腹膜転移モデルにおける、低浸透圧刺激併用の腹腔内PTX投与による腹膜播種形成抑制効果の検討を進めていく。また、RVDに関与する細胞容積感受性クロライドチャネルについても、胃癌・膵癌における発現、機能解析、発現レベルとPTX取り込みとの相関についての検討を進めていく予定である。
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