2017 Fiscal Year Research-status Report
抗癌剤耐性におけるライソゾーム酵素の機能解明と新規治療法の開発
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17K16584
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
白井 祥睦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10785364)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 抗癌剤耐性 / Lysosome / オートファジー / アデノウイルスベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は切除不能膵癌に対する抗癌剤耐性におけるオートファジーの役割を解明し、中でもLysosome酵素の働きに着目し、その機構を解明するものである。 近年、栄養飢餓により強く誘導されるオートファジーは癌細胞において亢進していることが示され、癌治療研究における有望なターゲットとして注目を集めている。膵臓癌においても悪性度とオートファジー亢進の関係性が示されており、オートファジー制御を目的とした治療法が研究されている。本研究では、オートファジーの実態が多様な加水分解酵素を内包する細胞内小器官であるlysosomeに依存した分解系であることに着目した。 Lysosome機能の低下とオートファジー効率の低下との関係は、ゴーシェ病やファブリー病をはじめとする種々の先天性のLysosome酵素欠損症において詳細に解析されており、基本的に1種類の酵素活性を低下させるだけでオートファジー不全が引き起こされ、細胞内に代謝不全蛋白が蓄積することで様々な症状が引き起こされる。 今回我々は、Pompe病の欠損Lysosome酵素の一つである酸性αグルコシダーゼ(GAA)遺伝子を抑制することで、膵臓癌の標準治療薬である塩酸ゲムシタビンによる抗癌剤耐性能が改善され、抗腫瘍効果が増強されることを検討している。また、アデノウイルスベクターを用いてGAA遺伝子をノックダウンし塩酸ゲムシタビンの抗腫瘍効果が増強されることを確認する。 現時点では実験に必要な学内各種委員会の承認を得ることができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに我々は、切除不能膵臓癌に対する標準治療である塩酸ゲムシタビン(GEM)をヒト膵臓癌細胞株(Panc1,MIA Paca2)に投与することで、複数のLysosome酵素遺伝子(GAA,GLA,ASAH1,IDS,IDUA等)が発現増強することを確認した。蛍光法においても、塩酸ゲムシタビン投与後48時間にLysosomeの発現が増強することを確認した。また、Western Blot法においても、LC3などのオートファジー関連タンパクや、GAAやGLAなどのLysosome酵素蛋白が発現増強することを確認した。また、GAAやGLAといったLysosome酵素の活性が有意に上昇していることを確認している。 次に、発現上昇を認めたLysosome酵素遺伝子の中で、小児先天性代謝疾患のPompe病の原因遺伝子である酸性αグルコシダーゼ(GAA)が、糖代謝にかかわっていることに着目した。siRNA法にてGAA遺伝子発現を抑制させることで塩酸ゲムシタビンによるアポトーシス関連タンパク(Cleaved caspase3,8,cleaved PARP)が発現増強することを確認し、抗腫瘍効果が増強され、細胞増殖能が抑制されることを、各種assayにて評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、Lysosome酵素遺伝子のノックダウンにより塩酸ゲムシタビンによるアポトーシスが誘導されていることからLysosome酵素の活性化が抗癌剤耐性に関与していることが示唆された。今後はこの酵素活性の上昇と、オートファジーの亢進との関係性を解明していく。 さらに、本学の病原体取り扱い委員会、および遺伝子組み換え委員会にて承認を得たのちにLysosome酵素遺伝子発現を抑制するアデノウイルスベクターの作製を開始する予定である。また、動物実験委員会の承認のもと、動物モデルへのベクターの投与についても検討していく。
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Causes of Carryover |
(理由)本年度実施予定であった電子顕微鏡によるオートファジー評価を行わなかった。当該評価にかかる予定であった助成金額が次年度に使用する予定となる。
(使用計画) 上記理由に基づき電子顕微鏡におけるオートファジー評価を本年執行予定である。当該実験に前年度助成金を執行する予定である。
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