2017 Fiscal Year Research-status Report
マウス肺移植モデルを用いた慢性拒絶、線維化機構の分子学的病態解明
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17K16603
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
畑 敦 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (30750806)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 慢性移植肺機能不全 / 閉塞性気管支炎 / 網羅的解析 / マウス同所性肺移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺移植は慢性進行性肺疾患患者に対する唯一の根治的治療方法として確立した。しかし慢性拒絶反応(慢性閉塞性細気管支炎(OB))のため、その長期予後は他臓器の移植より不良で、いまだに病態は不明で治療法が確立していない。我々はこれまで用いてきたラットの肺移植手技を応用し独自にマウスの同所性肺移植モデルを開発し、さらにマイナー抗原の不一致を利用して、臨床の慢性拒絶反応をよく模倣したマウスのOBモデル作成に成功した。このモデルを用いて、サイトカイン、遺伝子発現網羅的解析や遺伝子改変マウスを用いた移植実験によるOB病態解明を行い、また、臨床応用されている抗線維化薬Pirfenidon, Nintedanibを用いてそれらのOB抑制効果を病理学的、分子生物学的に検証し、OB新規治療法の開発へと結びつくtranslational studyを計画した。 前年度までの研究でマウスC57BL/6にC57BL10をドナーとして同所性肺移植を行うことで、移植後21日目に約50%にOB(Obliterative Bronchiolitis)を発症する事を確認した。上記モデルにて病理組織学的にOBを認めた群をOB群、OBを認めない非OB群、またコントロールをsham群とし、それらの肺に対するマイクロアレイ、PCRを用いた網羅的遺伝子発現解析を行った。OB群の肺においては、Natural killer細胞の他、TLRなどの自然免疫に加え、獲得免疫としてMHC class IIを介した抗原提示、Bcell、抗体産生に関するプロセスの上昇を有位に認め、抗体関連拒絶が疑われる結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの同所性肺移植に関しては手技を確立し、実際にマイクロアレイにおける網羅的解析を行い、Real-timePCR法による検証も行い、OBにおけるマーカー遺伝子を同定し、遺伝子発現解析においては当初の予定通り、進行している。フローサイトメトリーやELISAを使用したサイトカイン解析に関しては、サイトカイン量が低値で測定困難であり、実験系を再検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は免疫染色やフローサイトメトリーによる検討を追加し、どの細胞でマーカー遺伝子の発現が見られているのかをより詳細に検証する。また計画書の予定通り、中和抗体やノックアウトマウスによる機能解析、PirfenidoneやNintedanibによる予防効果の検証を行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画通り、同所性肺移植による慢性拒絶モデルを作成し、約50%に慢性閉塞性気管支炎(OB)が生じる事を確認した。OB群に加 え、OBを生じなかったものをnon-OB群とし、isograft群,sham群に対して、mRNAに対するマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現 解析を行った。その結果、OB群ではMHC classIIを介した特異的免疫反応に加え、toll-like receptorなどの自然免疫反応を検出し 、さらには抗体関連拒絶を示唆する遺伝子の発現上昇を認めた。今後、肺以外のリンパ節検体や血清などに対してPCRによる検証、 またアレイキットを用いたサイトカイン解析の開始のため、前倒し請求を行った。
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