2017 Fiscal Year Research-status Report
ヴァーチャルリアリティ技術を用いた胸腔鏡下縦隔腫瘍手術シミュレータの開発
Project/Area Number |
17K16618
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
櫻井 禎子 近畿大学, 医学部附属病院, 助教 (80760496)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 手術シミュレーションシステム / ヴァーチャルリアリティ / 胸腔鏡手術 / 縦隔腫瘍 / 胸壁腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、胸腔鏡手術による縦隔腫瘍摘出術シミュレーションシステムを構築するために、腹腔鏡外科手術のための生体モデルデータ生成システムであるPASS-GEN(三菱プレシジョン社)を、縦隔腫瘍摘出術用にカスタマイズ(臓器抽出やモデル変換などの条件をあらたに設定)することを目標としている。 これまでの成果の第1は、手術予定あるいは術後の患者のCT画像データから、PASS-GENの条件設定を変更することで、腫瘍と胸壁など周辺臓器を抽出し、実際の手術の術野を模擬できることが示されたことである。パソコンモニター画面上に作成した立体画像は、腫瘍と周辺臓器との関連などが手に取るように認識でき、手術計画に有用と考えられ研究継続の意義が確認できた。 つぎに上記をもとに仮想内視鏡術野画面を作成し、カメラおよび手術器械(鉗子など)の挿入位置を、パソコンモニター画面上に作成した胸壁上で様々に移動させ、視野や鉗子操作性のよい位置が探索できるようデータ変換することができた。これまで縦隔腫瘍手術3例(成人2例、小児1例)で、胸壁に鉗子を挿入した様子と、内視鏡術野画像を作成することができ、腫瘍と下行大動脈や横隔膜など周辺臓器の位置関係などをモニター画面で模擬することができた。 患者個々の画像データを用いた上記のような手術シミュレーションは、呼吸器外科では初めての試みであり、手術計画を行ううえでの有用性が大いに期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の推進方策に大きな変更はないが、当初研究対象とした縦隔に加え、胸壁疾患(腫瘍)にも応用可能と考えられ、併せて検討する予定である。現時点で判明した解決すべき課題を挙げる。 現時点で、腫瘍や胸腔内の臓器の抽出やデータ変換作業は、手作業で行っておりかなりの時間を要するため、臨床で使用するにはまだ現実的でない。主な臓器の抽出条件をあらかじめ設定して、短時間で作業を終えるプログラムのプリセット化が必要である。 また、本研究は、腹腔鏡手術に開発されたソフトウエアをカスタマイズして使用している。胸腔鏡手術との大きな相違は、胸壁を通してカメラや鉗子を胸腔に挿入する際に、肋骨によって動きが制限されることである。トロカシミュレーションを行う場合、この動きの制限をどのように計算に含めるかが課題として明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、症例をさらに蓄積する。縦隔に加え胸壁疾患を対象に加える予定であるが、過去に遡って研究に適当な手術症例を検索する。また初年度に行った小児(1歳6か月)縦隔腫瘍の症例での経験を踏まえ、体格が多様な小児胸腔鏡手術での有用性も期待されるため、研究対象に加える予定である。 本シミュレーションシステムの有用性の評価として、トロカシミュレーションによって設定したトロカの位置と、実際の手術で術者が設定したそれとを比較することを計画している。 並行して上述した課題の解決を図る。臓器抽出の設定は、代表的な臓器(横隔膜、大動脈、肋骨、心膜など)について、5例程度で最大公約数を設定することを検討中である。 現行システムでは、鉗子の運動の支点を腹壁の表面(皮膚)に設定している。柔軟性のある腹壁ではとくに問題ないが、胸壁では肋骨によって運動制限が加わるため、修正が必要である。まずは、鉗子の運動の支点を、胸壁の表面、肋骨の中心、あるいは胸膜に置くなどして、実際の手術操作に近い条件を探索する。
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Causes of Carryover |
当初29年度中の成果発表を計画して旅費を計上していたが、実現できなかったため、差額が生じた。次年度に発表するための旅費として繰り越したい。
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