2017 Fiscal Year Research-status Report
悪性髄膜腫の網羅的遺伝子解析および動物モデルの作成
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17K16630
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
工藤 琢巳 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (90632125)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / 脳腫瘍 / 腫瘍抑制因子 / 髄膜腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
髄膜腫は最も発生頻度の高い原発性脳腫瘍の一つであるが、異形成髄膜腫、退形成性髄膜腫では5年生存率は66.3%と良好な治療成績が得られていない。悪性神経膠腫の研究は多岐にわたり様々な研究が行われているが、悪性髄膜腫(GradeⅡ及びGradeⅢ髄膜腫と定義する)は未だに不明な点が多く、研究課題の多い疾病である。本研究の目的は、悪性髄膜腫(WHO GradeⅡおよびGradeⅢ髄膜腫と定義する)の遺伝学的特徴を解析し、その結果をもとに治療標的を探索すること、及び悪性髄膜腫の動物モデルを作成することである。 本学で治療のために採取された、anaplastic meningioma 2例、atypical meningioma 3例、controlとしてgrade1のmeningioma 5例の計10サンプルからmRNAを抽出し、RNA-seq法を用いて全遺伝子の発現状況を網羅的に解析した。このgrade 1, grade 2, grade 3で異なる遺伝子発現状況を示していた。atypical meningiomaとbenign meningiomaをIngenuity pathway analysisを用いて解析すると、幾つかのpathwayがこれらのgroup間での相違として検出された。具体的なpathwayの記述は行わないが、他の癌遺伝子や他の癌で活性化されているpathway、他の癌抑制遺伝子や非活性化されているpathwayが同定された。髄膜腫は乳癌と遺伝学的性質が類似していることが言われており、今回もある程度類似していることを再確認した。髄膜腫の生存期間に関するデータベースがないため、乳癌における生存期間解析をcBioportalを用いて行った。本研究で抽出したいくつかの遺伝子のうち生存期間に影響を与える遺伝子を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では次の3つのステップを想定した。①手術により採取した悪性髄膜腫および比較対象として用いるGradeⅠ髄膜腫からRNAを抽出し、microarrayにより全遺伝子の発現状況を網羅的に解析する。Ingenuity Pathway Analysisを用いてpathway解析を行う。遺伝子発現量の相違、pathway analysisの結果をもとに悪性髄膜腫に影響を及ぼしうる遺伝子、pathwayの候補を同定し、治療標的を探索する。②採取した悪性髄膜腫の検体から、接着培養条件と非接着培養条件の双方で初代培養を行う。得られた培養細胞を免疫不全マウスの脳に移植し、動物モデルを作成する。③治療標的に対する薬剤を培養細胞、さらに時間的猶予があれば動物モデルに投与しその効果を解析する。 上述の通り、①は既に終了している。当初この作業には相当の時間がかかることを想定していたため、①については順調に経過している。一方②の初代培養は様々な条件検討を行っているがまだ成功に至っていない。本研究をサポートしていただいているMGHの脇本先生との相談においても条件検討が難しく、現時点では手探りの状態である。③については本来であれば②で作成した初代培養およびマウス脳腫瘍モデルを使用すべきではあるが、樹立された細胞株を用いて行うべく、RIKENより悪性髄膜腫の細胞株を入手した。今後は下記のごとく薬剤を用いた効果判定を細胞株および細胞株を用いたマウス脳腫瘍モデルで行う予定としている。以上から経過としては概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、研究計画は3ステップで構成されている。①手術により採取した悪性髄膜腫からRNAを抽出し、全遺伝子の発現状況を網羅的に解析しpathway解析を行う。遺伝子発現量の相違、pathway analysisの結果をもとに悪性髄膜腫に影響を及ぼしうる遺伝子、pathwayの候補を同定し、治療標的を探索する。②採取した悪性髄膜腫の検体から、初代培養を行う。得られた培養細胞を免疫不全マウスの脳に移植し、動物モデルを作成する。③治療標的に対する薬剤を培養細胞、さらに時間的猶予があれば動物モデルに投与しその効果を解析する。 初代培養の作成に難渋しており、現在、RIKENより悪性髄膜腫の細胞株を入手し培養を開始している。当初の予定では、初代培養作成に失敗した場合、SV40 virus導入による細胞の不死化を予定していたが、この作業による遺伝子発現状況や細胞の性質の変化が、その後の実験の結果や解釈に与える影響を考慮し、細胞の不死化は行わないこととした。樹立された細胞株を用いた脳腫瘍モデルの作成は問題なく行えるものと想定している。現在培養を開始した細胞株を免疫不全マウスの脳に移植して作成を試みる予定である。 上記の通り同定した遺伝子をsiRNA法およびCRISPR法を用いて発現抑制し、培養細胞の表現型の変化の解析を行う。siRNAは既に入手しており、またCRISPR法に用いるsgRNAをvectorへcloningしているところである。表現型は、細胞の形質変化、細胞増殖、細胞周期、migrationを中心に観察する。表現型変化を起こした遺伝子については、shRNA法およびCRISPR法で発現抑制した細胞株を免疫不全マウスの脳に移植して脳腫瘍モデルを作成し、生存期間解析および病理組織解析を行う。さらにpathwayの活性剤もしくは阻害剤を用いて薬剤効果の判定を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は6652円とほぼ0円に近い。使用計画通りに概ね進んでおり、特に問題は無い。
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