2017 Fiscal Year Research-status Report
脳腫瘍を構成する細胞群におけるAquaporin-1発現意義の解明と新規治療戦略
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17K16634
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大石 正博 金沢大学, 附属病院, 医員 (50646693)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アクアポリン1 / 脳腫瘍 / Glioblastoma / 水チャネル / 血管新生 / 浸潤能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脳腫瘍における選択的水チャンネルであるAquaporin(AQP)1 の発現意義を解明し、AQP1 の発現量を制御することで解糖系をコントロールし、さらには血管新生を抑制し、新たな治療ターゲットとしての可能性を見出すものである。脳腫瘍の中でも悪性グリオーマであるGlioblastomaを対象とし、まずは腫瘍細胞におけるAQP1の発現意義を解明する。 平成29年度はGlioblastoma細胞株であるU251、U87にAQP1をtransfectionしクローニングを行い、AQP1の発現調整したU251およびU87 stable cell lineを作成した。これらの細胞では増殖能に変化はないが、AQP1の発現量依存に浸潤能および遊走能が亢進することを確認した。他の悪性腫瘍での報告と同様の所見であった。 さらにこれらAQP1発現調整細胞株が血管新生の及ぼす影響を調べた。AQP1発現調整細胞株と血管内皮細胞を共培養しtube formation assayを施行した。半透膜で分離した条件下での共培養ではtube formationに差を認めなかったが、直接接触させた状態での共培養ではtubeの形状などに差を認めた。腫瘍細胞による液性因子ではなく直接接触による影響がtube formationに影響を与えている可能性が示唆された。 続いてAQP1が浸潤能、遊走能および血管新生に影響及ぼす機序を解明する。網羅的解析や文献検索を用いることで、これらの機能に影響を及ぼす経路にかかわると考えられるタンパクの候補がいくつか見出すことができた。次年度はこれらの候補タンパクに関わる解析を進めていく。またAQP1阻害剤による細胞の性質変化や候補タンパクの発現の変化を調べていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で使用しているGlioblastoma cell lineにはAQP1の発現を認めなかったため、細胞にAQP1をtransfectionしクローニングを行った。これによりAQP1発現調整cell lineを樹立し、これによりAQP1発現量に応じた細胞の性質変化や蛋白発現の評価を行うことが可能となった。 また当初は平成30年度に施行予定であった腫瘍細胞のAQP1が血管内皮細胞に与える影響、血管新生に及ぼす影響に関する検証を行った。さらに、その機序を解明するにあたり、THSD7Aのpaxillin発現への関与やneurotriminの発現上昇の関与を見出した。 in vitroの系での実験は予定通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は平成29年度の結果からAQP1の発現が細胞浸潤や血管新生に及ぼす因子としてTHSD7Aやpaxillinの発現、neurotriminの発現の関与を検証する。まずは脳腫瘍検体に対して免疫染色を行い、発現を確認する。またin vitroではこれらのタンパクの発現を低下および亢進させ浸潤能や血管新生に及ぼす影響を検討する。さらにAQP1とTHSD7Aおよびneurotriminを繋ぐpathwayに関しても検証する。 in vivoの系としては免疫不全マウス(SCID-NOD マウス)の脳にAQP1 発現調整脳腫瘍細胞株を移植し、AQP1 発現レベルによる腫瘍増殖能、浸潤能の変化、さらには血管新生への影響を検証する。 これらから得られた結果を取りまとめ、成果を論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
平成29年度途中で科学研究費助成事業前倒し支払請求を行った。それによりin vitroの系の検証は予定より進捗した。平成30年度は当初の予定通りin vivoの系の実験を行うが、発生した残額は当初計画になかった新たに注目したタンパクであるTHSD7Aやneurotriminの検証やAQP1と浸潤能および血管新生をつなぐpathwayに関する検証のための費用に充てる。
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