2018 Fiscal Year Research-status Report
ガレクチン-3のくも膜下出血後早期脳損傷発生メカニズムにおける役割の解明
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17K16640
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
芝 真人 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (30595682)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ガレクチン-3 / modified citrus pectin / くも膜下出血 / 早期脳損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
マトリセル蛋白は細胞外マトリックスに属する蛋白群であるが、それ自体は細胞支持組織としての役割は有さない特殊なもので、正常状態ではほとんど発現しておらず、病的状態で発現が増強し、細胞表面の受容体、サイトカイン、他の細胞外マトリックスなどと反応し、細胞間、細胞とマトリックス間の様々な機能を調節する。ガレクチン-3はマトリセル蛋白の1つで、研究代表者及び研究協力者が行った臨床研究では、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血(SAH)後に血液中で増加することが確認されているが、その意義は未だ明らかになっていない。本研究ではガレクチン-3の早期脳損傷における役割について検討し、そのメカニズムを解明することを目的としている。 本年度はガレクチン-3のインヒビターであるmodified citrus pectin(MCP)がSAH後の早期脳損傷を抑制するかについて検討した。251匹の野生型(C57BL/6)マウスをランダムにsham+vehicle群、SAH+vehicle群及びSAH+MCP群(0.8ug, 4ug, 16ug, 32ug)に分け、神経学的スコア、SAH重症度、脳含水量、脳内タンパク質発現について調べた。SAHはオスの野生型マウスの左内頚動脈先端部を4-0ナイロン糸にて血管内より穿通させることにより作成した。Vehicle及びMCPはSAH作成後30分で脳室内より投与した。SAHにより脳内ガレクチン-3が有意に発現していた。MCPの各濃度の中で4ugが最も神経症状の悪化と脳浮腫を抑制した。また4ug MCPは、ERK1/2, STAT-3, MMP-9などの細胞内シグナリング関連蛋白を不活化することで、血液脳関門障害とガレクチン-3誘導を抑制した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来、くも膜下出血後の予後不良因子として遅発性脳血管攣縮が注目され研究が行われてきたが、最近ではその焦点が早期脳損傷にシフトしてきている。しかし、くも膜下出血後早期脳損傷の病態においてはアポトーシスや血液脳関門障害など様々な因子の関与が報告されているもの、詳細なメカニズムについては未だ明らかとなっておらず、したがって、治療法も無いのが現状である。 ガレクチン-3は種々の組織の細胞内外に存在し、細胞外では細胞接着やアポトーシスに関与したり、細胞内では他の細胞内蛋白と結合し、炎症における信号伝達に関与するとされている。研究代表者及び研究協力者はくも膜下出血患者の来院時重症群と機能的予後不良群において血液中ガレクチン-3濃度が上昇することを報告しており、ガレクチン-3はくも膜下出血後の早期脳損傷のメカニズムにおいて重要な役割を果たしていることが予想される。今回ガレクチン-3がSAH後の脳において発現が増加し、血液脳関門障害と脳浮腫に関連していることが明らかとなった。さらに今後神経細胞のアポトーシスに関与するか、関与する場合、ガレクチン-3を抑制する薬剤を使用することによってその情報伝達機構を明らかにできると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ガレクチン-3を抑制するmodified citrus pectin以外の方法として、ガレクチン-3受容体の一つであるToll様受容体4の拮抗薬LPS-RS、またToll様受容体4の下流に存在するとされているMAPキナーゼのインヒビターを使用し、様々な部位でガレクチン-3関連シグナルの抑制を図り、くも膜下出血後早期脳損傷のメカニズムを明らかにする。また、くも膜下出血後の脳において、Toll様受容体4を介したMAPキナーゼ・シグナリングによりガレクチン-3が発現し、これが神経細胞のアポトーシスを誘導する、その一方でpositive feedbackによりガレクチン-3自体の発現が促進され、アポトーシスを悪化させるという仮説を立て、これらを確かめるために、上記の方法でガレクチン-3を抑制したくも膜下出血モデルに精製ガレクチン-3を脳室内に投与することで、神経細胞のアポトーシスや神経症状の悪 化、更にはガレクチン-3自体の誘導が生じるか観察する予定である。つまり、くも膜下出血後に脳で発現したガレクチン-3がToll様受容体4に結合し、シグナリング下流のMAPキナーゼを活性化することによって早期脳損傷を引き起こすというメカニズムが明らかとなることが予想される。このメカニズムの解明によって、ガレクチン-3抑制を介する新たな早期脳損傷に対する治療法の開発へと発展する可能性があると考えられる。
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Research Products
(4 results)