2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K16644
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福永 貴典 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30745005)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経膠腫 / G0S2 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、申請者らはThe Cancer Genome Atlas (TCGA)を解析することで、神経膠腫においてWHO分類に基づいた悪性度が高いGradeほど、G0S2遺伝子の発現量が高い事を確認した。また、神経膠腫において予後が良いIDH変異型と予後が悪いIDH野生型のG0S2遺伝子の発現を比較したところ、IDH変異を有する神経膠腫群ではG0S2発現量が低下していることを確認した。さらにこれらの神経膠腫のデータを解析したところ、G0S2遺伝子の変異は1例も認めなかった事より、G0S2遺伝子の発現量はエピジェネティックに制御されている可能性が示唆されたため、神経膠腫細胞株にIDH1変異ベクターを導入し、TET2の発現が低下していることを確認した上で、G0S2の発現量が低下していることを確認した。続いて、IDH1変異によるG0S2プロモーター領域のメチル化亢進を明らかにするために、IDH1野生型、IDH1 R132H変異型のベクターを導入した悪性神経膠腫細胞株を用いて、G0S2プロモーター領域のDNAメチル化レベルを検討したところ、IDH1R132H変異型ベクターを導入した悪性神経膠腫株でG0S2プロモーター領域のメチル化が亢進していることを突き止めた。さらに、実際に神経膠腫患者より摘出した腫瘍組織を用いて、同様にIDH1変異がある神経膠腫ではG0S2発現量が低下し、WHO Gradeが高いほどG0S2の発現が増加しているというデータを得ることが出来た。これらのデータの解析によってG0S2が神経膠腫の悪性度に関与している可能性が考慮されたため、G0S2 siRNAによって悪性神経膠腫株のG0S2の発現を抑制し、浸潤能を検討したところ、G0S2の発現が抑制された悪性神経膠腫株では浸潤が抑制されることを確認した。これらの結果は、国内、国際学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、①神経膠腫におけるG0S2発現低下と予後改善の関連、②IDH1変異におけるG0S2プロモーター領域の高メチル化、③G0S2発現低下による神経膠腫細胞の増殖・細胞浸潤への影響、④G0S2発現低下と神経膠腫の悪性化に関与する経路の関連、⑤神経膠腫の新たな治療薬ターゲットとしての検討の5点を解決課題として挙げている。当初の計画通り、今年度は①、②、③の課題について取り組み、順調に実験、解析を進めることが出来、国内、及び国際学会で発表を行うことが出来たため、おおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に実施した①、②、③の実験結果より、G0S2がIDH変異における悪性神経膠腫細胞の浸潤に関与していることが強く示唆された。本年度においては、実際に動物実験を行い、生体脳内においてもG0S2の発現を低下させることで、神経膠腫の浸潤が抑制されるかどうかを検討し、さらにその結果として生存期間の延長が見られるかどうかを検討する。それらの解析が終了したのちに、G0S2遺伝子の発現低下と神経膠腫の浸潤に関与する経路の関連について検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
本年度に実施した研究結果により、G0S2遺伝子発現抑制と悪性神経膠腫の浸潤に関与する経路については様々な浸潤経路が関与する可能性が考えられるため、当初の計画よりも多くの抗体やプライマー、また薬剤スクリーニングなどが必要となることが予想される。繰り越した次年度使用額はこれらを補填するために用いる予定である。
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Research Products
(3 results)