2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K16645
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 翔 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10792484)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 脂質代謝酵素 / ホスホリパーゼ / PLA2G6遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜急性期の損傷脊髄ではエネルギーが枯渇し、フリーラジカルによる脂質酸化が生じる。損傷部ではホスホリパーゼA2(PLA2)により脂質分解が進行し、脂質代謝産物が損傷を増悪する。我々は脂質分解作用を有するiPLA2βのPLA2G6遺伝子に着目した。 脊髄挫滅装置を用いて、10~12週齢のPLA2G6遺伝子欠損型マウス(n=9)または野生型マウス(n=9)の第10胸髄高位に70kdynの強さで中等度挫滅損傷を作成した。損傷直後から損傷4週間後まで1週間ごとにBasso Mouse Scale(BMS)を用いて下肢運動機能を評価した。また、損傷から4週間経過した後に各個体を全身灌流固定し、損傷部脊髄の凍結切片を作成し、組織学的評価を行った。 その結果、PLA2G6遺伝子欠損マウスの脊髄損傷モデルでは損傷1週後、2週後、3週後、4週後のいずれの時期においても有意に野生型より脊髄損傷後の下肢運動機能の低下が軽減されていた。かつ組織学的にも損傷が軽減されていることが示された。 以上より、PLA2G6が亜急性期脊髄損傷の増悪に関与していると考えられた。この結果をふまえて、今後、PLA2G6遺伝子欠損と野生型マウスの脊髄損傷モデルにおいて、損傷部脊髄で有意差のある脂質代謝産物を同定し、亜急性期脊髄損傷の増悪機構の解析をすすめていく。また、同時にPLA2G6特異的阻害剤であるBromoenol lactone(BEL)を野生型マウスの脊髄損傷モデルの髄腔内に、損傷後よりマイクロインフュージョンポンプを用いて持続投与することで、脊髄損傷が軽減されるかを運動機能および組織学的に評価していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、PLA2G6遺伝子欠損型マウスを安定して作成することができており、それにより脊髄損傷モデルの運動機能評価および組織学的評価を順調に進めることが可能であった。それにより、PLA2G6が亜急性期脊髄損傷の増悪に関与していると考えられるため、今後、PLA2G6遺伝子欠損と野生型マウスの脊髄損傷モデルで有意差のある脂質代謝産物を同定し、亜急性期脊髄損傷の増悪機構の解析をすすめていく。
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Strategy for Future Research Activity |
損傷部脊髄のオミクス解析、リピドミクス解析を行い、PLA2G6遺伝子欠損と野生型マウスの脊髄損傷モデルで有意差のある脂質代謝産物を同定し、亜急性期脊髄損傷の増悪機構の解析をすすめていく。 それとともに、PLA2G6を特異的に阻害するBromoenol lactone(BEL)を野生型マウスの脊髄損傷モデルの髄腔内に投与することで、脊髄損傷が軽減されるかを運動機能および組織学的に評価していく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた損傷部脊髄のオミクス解析およびリピドミクス解析を次年度に実施する予定となったため、次年度使用額が生じた。 次年度は当該助成金と合わせて、オミクス解析およびリピドミクス解析費用とPLA2G6特異的阻害剤Bromoenol lactoneの髄腔内持続投与の費用に使用していく予定である。
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