2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K16645
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 翔 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10792484)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 脂質代謝酵素 / ホスホリパーゼ / PLA2G6 / iPLA2β / リゾリン脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では遺伝性神経変性疾患の原因遺伝子であるPLA2G6遺伝子に着目し、PLA2G6ノックアウト(KO)マウスを用いて亜急性期脊髄損傷におけるPLA2G6遺伝子の病理学的関与の解明を目指している。PLA2G6遺伝子がコードするカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2β(iPLA2β)は膜リン脂質のリモデリングにおいて重要な役割を果たし、病理学的役割に関しても知見が蓄積している。 昨年度までの研究により、KOマウスでは野生型(WT)マウスより脊髄損傷後の下肢運動機能の回復が有意に上昇していることを示した。本年度では損傷部脊髄での質量分析(WTマウスおよびKOマウスそれぞれn=3ずつ)による解析を行ったところ、リゾリン脂質がKOマウスで低下しており、脊髄損傷亜急性期の増悪に関与していることが示唆された。また、PLA2G6特異的阻害剤Boromoenol lactone (BEL)をWTマウス脊髄損傷モデルの髄腔内にマイクロインフュージョンポンプを用いて持続投与した。その結果、特異的阻害剤投与群では脊髄損傷後の下肢運動機能の改善が上昇する傾向にあり、組織学的評価では損傷部の空隙形成および脱髄が軽減される傾向にあった。以上より、PLA2G6遺伝子は髄腔内において脊髄損傷後の脱髄や炎症反応の惹起に関与している可能性があると考えられた。 上記の研究結果をふまえて、今後PLA2G6抗体をWTマウスの脊髄損傷モデルの髄腔内へ持続投与することで、損傷の程度を調べる予定である。また、免疫染色を含めたより詳細な組織学的評価を進めていく予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りPLA2G6遺伝子欠損マウスは安定して作成できており、脊髄損傷後の運動機能評価及び組織学的評価は順調に進めることができた。野生型マススの脊髄損傷モデルを用いた質量解析も島津テクノリサーチに委託し問題なく行うことができた。脊髄損傷モデルの作成も実験手技の技術向上により順調に行えている。 以上より、現状のところ概ね研究計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果をふまえて、次年度ではPLA2G6抗体をWTマウスの脊髄損傷モデルの髄腔内へ持続投与することで、損傷の程度を調べる予定である。また、免疫染色を含めたより詳細な組織学的評価を進めていく予定としている
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Causes of Carryover |
次年度使用額は564円と少額であり、概ね予定通りである。
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